第4回 市民協働の実践者に学ぶ
第4回は、「市民協働の実践者に学ぶ」と題し、講師として大森酉三郎さん、大塚朋子さんをお招きして、協働で目指すもの・プロセスなどついてお話しいただきました。
開催概要
【開催日時】
2023年2月2日(木) 18時30分~20時45分
【テーマ】
地域連携による次世代リーダーの育成~竹山団地の事例から~/様々な人と共に「子育てをまちの力で豊かに」
【講師】
大森酉三郎 氏
〔学校法人神奈川大学アスレティックデパートメントスポーツ戦略室専任職員
サッカー部監督〕
大塚朋子 氏
〔認定NPO法人こまちぷらすウェルカムベビープロジェクト/
こよりどうカフェ マネージャー〕
【オーガナイザー】
治田友香〔関内イノベーションイニシアティブ株式会社 代表取締役〕
地域連携による次世代リーダーの育成~竹山団地の事例から~
まずは、大森酉三郎さんより、「竹山団地プロジェクト」についてお話しいただきました。
団地をサッカー部の寮として活用し、地域課題解決を目指すこのプロジェクトは「もともと神奈川大学の建学の精神やSDGsの文脈の中で生まれた」と大森さんは語ります。
竹山団地は住民の46%が65歳以上。高齢化に伴うコミュニティの希薄化や魅力低下などの様々な課題に対し、大学生たちが暮らし、様々な活動を通じて地域の人と交流を深めることで、学生の人間性の育成に取り組みつつ、同時に地域の課題解決に向かう循環を作り出しています。
学生の入寮までの過程では、「団地住戸は家族が住むもの」という住宅供給公社でのルールによる縛りで苦労し、調整に1年を費やした結果、神奈川県住宅供給公社と大学間で協定書を締結することでようやくブレイクできたそう。
現在は、公社・NPO法人KUSC・大学の三者による『団地における遊休資産活用型・産官学民連携による「健康・つながり・まち」づくり』事業がスタート。団地の新しい未来づくりが始まります。
「協働は一人ではできないもの。横浜市の共創の文脈を活用しでパートナーと出会いながら、サッカーの戦績向上・竹山プロジェクトの両輪を回すことで『ウェルビーイング・フットボール』を標榜していきたいです」と強く語る姿が印象的でした。
様々な人と共に「子育てをまちの力で豊かに」
次に大塚朋子さんより「ウェルカムベビープロジェクト」の事例から、認定NPO法人こまちぷらすが「子育てをまちの力で豊かに」するためにどう取り組んでいるのか、お話しいただきました。
まちの人たちと出産祝いを作り届ける過程で子育てへの理解を深め広める、ヤマト運輸(株)との協働プロジェクト。鶴見区や茅ヶ崎市、千葉県松戸市と、各地の団体と連携しながら取組が広がっており、2016年から5年間で約3200もの家庭に出産祝いを届けてきました。
企業からの協賛による出産祝いの品には、なんと選考があるそう!「なんでもいいわけではなく、本当に喜ばれるもの・目指すビジョンにつながるものを協賛企業から提案してもらい選考することは、大事なプロセスなのです」
出産祝いを送る取り組み以外にも、「ウェルカムベビーなまち」を目指した協働事業も生まれている。子育て中のお父さんからの困りごとからプロジェクトが生まれ、東京キリンビバレッジ株式会社と花王株式会社が、日本初のおむつ自販機を開発。全国92カ所に広がり、設置場所に多くの商業施設が協力するなど、輪は今も広がり続けています。
「このプロジェクトは来年で8年目、当時生まれた子たちは小学生になります。『贈る→受け取る』から『一緒に作る』循環に変わりつつある今、循環が回るたびにいろんなことが増えていくことを大事に、取り組んでいきたいと思います」と締め括ってくださいました。
クロストーク
発表後のクロストークでは、お金についての話も。
シビアではあるけれど、「活動を続けるためには必要なもの」と伝え続けることを大切にしていると大塚さん。
大森さんからは、協働をスタートするうえで必要なこととして、挨拶から始める謙虚な姿勢と、相手の持つ文脈や課題感を理解して課題と価値を交換してゆくこと、と教えていただきました。
最後にお二人から、目指す未来と受講生へのエールをいただきました。
大塚さん:
昨年12月に生まれたばかりのこよりどうカフェで、障がい分野の制度を利用されている方たちと一緒に働くことは、こまちのスタッフにとって大きなチャレンジです。
一人で完璧にできる必要はなくて、やっていきたいこととともに、時に不安なことも伝えながら、だからこそ色んな人との出会いを楽しみながら、一緒に頑張っていきたいと思っています。
大森さん:
垣根を越えて地域に根ざして活動することで、課題と価値が、双方に循環していく関係性を深めてゆき、笑顔あふれる未来を創ることに微力ながら尽力していきたいと思っています。竹山団地は、非常にいいところです。皆さんぜひいらしてください!
相手の持つ文脈の中に入って循環を作り出すこと。ビジョンや活動を続けるために必要なことをしっかり伝えたうえで、一緒に作るプロセスから空気を生み出すこと。協働から未来を創ってゆくために必要な姿勢をお二人から学んだ第4回でした。