横浜市市民協働推進センター

取り組み紹介 【対話&創造ラボ 令和3年度|協働を可視化する|社会をアップデートするためのパーパスモデルを学ぼう! Event Report】

登壇者の様子
2022.2.12 イベントレポート 対話&創造ラボ
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共創を可視化するパーパスモデル

2022年1月21日木曜日に横浜市庁舎にて開催された、横浜市市民協働推進センターが行う市民参加型の対話のイベント【対話&創造ラボ】。このイベントは、さまざまな主体の交流・連携から、新たな知を生み出す場として昨年からスタートしています。
今年度は「社会をアップデートさせる“協働”を紐解こう!」をテーマに、さまざまな実践者や研究者を交えて“協働”の価値とその魅力、これから横浜をもっと豊かで暮らしやすい街にしていきたい方々が集う場として開催しています。

今回はその第二回、「協働を可視化する」をテーマにした、吉備友理恵さんによるお話をレポートします。

◎当日の配信動画はこちらから(ページ下部へリンク)
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吉備さんは、企業や行政、さまざまな人が集う場づくり、マルチステークホルダーの共創、場を通じたイノベーションについて研究をされています。共創の場づくりを数多く伴走するなかで、共創の魅力・醍醐味をどうやって可視化、言語化して行けばいいのか、もやもやする日々を送られていた中で、1つのフレームワークとして「パーパスモデル」を生み出されています。

今回は協働・共創のプロジェクトを、他者とどう理解し認識していくのか、そのために必要な情報の整理の仕方・考え方を学びながら、パーパスモデルの書き方、パーパスモデルの軸となる“パーパスフッド”の考え方について吉備さんにお話を伺いました。後半では横浜市内の協働事例をもとに、パーパスモデルを作りながらディスカッションタイムを設けるなど、ご参加いただける皆さんとの対話を行いながら進めていきました。

登壇者ご紹介

吉備友理恵さん

一般社団法人Future Center Alliance Japan/

株式会社日建設計イノベーションセンター

 

東京大学大学院新領域創成科学研究科卒業。
現在は建築や都市のデザインを行う(株)日建設計のイノベーションセンターで社内外をつなぐ役割を担いながら、(一社)FutureCenterAllianceJapanで場を通じた共創やイノベーションについてリサーチを行う。様々な目的や価値観を持った関係者が、同じ社会的方向を向くためのツールとして「パーパスモデル」を考案。来春に出版予定。共創を概念ではなく、誰もが実行できる手触り感のあるものにするために事例やフレームワークを発信する。『社会に変化つくる人に、闘う武器と繋がりをつくる』ことを自分の役割と捉え、イノベーション創出のための環境構築に尽力している。

きびゆりえ note

 

共創とは何か?

まず始めに、横浜市共創推進室共創推進課の中川さんから、「なぜ共創が重視されているのか?」というお話がありました。

横浜市が定義している「共創」とは、「社会課題の解決を目指し、民間事業者と行政の対話により連携を進め、相互の知恵とノウハウを結集して、新たな価値を創出すること」。

コミュニケーションを通じて、新しい価値を、共に作っていくことが共創であり、横浜市中期4か年計画の3つの基本姿勢のひとつに、オープンイノベーションの推進があり、このオープンイノベーションが共創にあたると中川さん。

なぜオープンイノベーションが必要なのかというと、横浜市の出した長期推計によると、今のままの方法では2065年には横浜市の財源は2160億円足りなくなる、と見られており、そのため、私達は、行政だけで行っていた今までの方法ではなく、共同・共創で未来を変えていく必要があることなど、ご紹介いただきました。

プレゼンテーションの様子

誰もが「共創」に向かう時代

次に、吉備さんから共創についてお話ししていただきました。

共創を考える上で、「構想」「都市」「官民」という3つの切り口を大事にされていること、
中長期でありたい未来を組み立てた「構想」がないと人は変化に向かわない、
構想があっても、実装していくフィールドとしての「都市」がないと意味がない。
そして、それを実現してくためには「官民」の連携が必要。

今の時代は、誰もが「共創」に向かっていく時代だと語る吉備さん。

近年話題になっているSDGsやESGなど、社会的意義の重視や持続可能な社会が広がっている中で、先ほど中川さんからもお話があったように、従来のやり方は限界を迎え、共創やイノベーションの必要性が語られるようになってきているから。
そして、もちろん大事なのは分かるけど、実際どうすれば共創・協働できるのか?というところで、「パーパスモデル」というツールについて詳しくご紹介いただきました。

プレゼンテーションスライド

共創を可視化するパーパスモデル

パーパスモデルとは、今まで見えてこなかった、ステークホルダーとその役割、個々の目標、
そして、共通目的を可視化するために考えられたツール。

経済的合理性を見るビジネスモデルと違い、社会性を見るのがパーパスモデルであり、「どんな人」が「どんな想い」で「どのように」関わっているかが可視化できるツールと吉備さん。

パーパスモデルは、円型の図になっていて、下半分は価値を作る側、上半分は価値を受け取る側で構成、
さらに、企業、行政、市民、大学/研究機関で、属性ごとに4つに色分けがなされます。

それぞれについて外側からステークホルダー、役割、目的を書き、真ん中に全てのステークホルダーに共通する共通目的と、価値が生み出される場の名前を書く仕様となっています。

色や上下で各関係者が分かれていることで、価値を受け取る複数の人々に対して、どんな人たちがどんな思いでどう関わっているのかを捉えることができるため、関係者の多い共創プロジェクトの可視化に向いています。

パーパスモデルで見えた時系列での変化

ここで、このイベントの司会進行をつとめる市民協働推進センターの森川と、中川さんからパーパスモデル事例を見た気づきを共有。
時系列で見ると、発展につれて関係者が増えていくこと、色によって関わるステークホルダーの種類が増えていくことが可視化できること。さらに、今まで価値を受け取る側だった人が価値を与える側に移動するという共創の形も見て取ることができたことが気づきとして挙げられました。

プレゼンテーションスライド

視野を広げて俯瞰しよう

ここで吉備さんから、協働がうまくいかない時のポイントを教えていただきました。

うまくいかない時、つまづくポイントとして、共通目的、ステークホルダー、役割と目的があるとのこと。

これまでの経験から、共通目的でつまづき、同じ方向を向いていなかった、ステークホルダーでつまづき、適切な関係者を選べていなかった、それぞれの役割と目的がはっきりしておらず、誰が何をするか分かっていない、という状況が多いとのこと。

そのため、視野を広げて俯瞰して、相手の立場に立って考えてみることが大切ですと吉備さん。

トークセッションからみえてくること|「表現するツール」としてのパーパスモデル

ここで、お二人が一緒にパーパスモデルを作った横浜市の共創・協働プロジェクト事例である

「スクリレ」

を例に、手を動かしながら考え作った際に気付いたことをお話していただきました。

中川さん:
表現するツールであることを改めて感じました。伝わるようなものにするためには、自分で書くだけではなく、壁打ちというか、対話で伝わるかどうかを何度も試していくことが必要だということが分かりました。

吉備さん:
図の目的がないまま始めてしまうと伝わらないと気付きました。対話をしながら、自分の認識が合っているのかや伝わるかどうかをコミュニケーションを通して作っていくことが必要です。

中川さん登壇スライド スクリレについて

価値の共有ができ、担い手を増やす

最後に、オンラインで参加いただいている皆さん同士がグループを作り、対話のセッションを行い、その感想や質問の共有がありました。

参加者さん:
パーパスモデルでプロセスや思いを見て取ることができたので、今までも知っていた「スクリレ」を、より活用してみたいという気持ちになりました。価値の共有ができることがパーパスモデルの素晴らしい点だと感じました。

森川さん:
パーパスモデルを通じて、その協働・共創のプロジェクトが「どんなステップで、どういう役割の人が増えていくのか」を可視化、伝えることできることができる。その可視化は、新たな協働・共創の担い手を増やすために必要で、とても有益だということが分かりました。

中川さん:
形にすることが目的ではないということが大事だと思います。
誰かと共創する時は、自分の中の正解だけが正解ではなく、回り道して考える必要がある中で、このモデルを使うことでより良い共創ができるようになると思います。

吉備さんによるパーパスモデルの作り方スライド

今回のイベントを通して、ひとつの同じ目的のために、思いをもった一人ひとりが取り組む「共創」を実現するためのツールとして、関わる一人ひとりとその人たちの思いが可視化できるパーパスモデルに可能性を感じました。
ひとつの主体で全てを解決しようとするのではなく、人と人が連携することで今までにない新しい価値を生み出すことができることが、パーパスモデルの紹介の中で分かりました。対話はコミュニケーションを通してパーパスモデルを埋めていく過程もあり、パーパスモデルを作る時点でも、共創ができるのではないかなと思いました。
また、セッションの中にもあったように、パーパスモデルは表現するツールであり、社会性を可視化するツールであり、思考を整理できるツールでもあります。様々な目的で活用できるところが素晴らしいと感じ、実際に使ってみたいと思いました。
最近は、結果から得られる価値だけではなく、関わった人々や背景をふまえた価値が重視されているように感じます。そんな今だからこそ、パーパスモデルでそれらを可視化し考えることが必要なのだと思いました。

書き手 mass×mass 関内フューチャーセンター  インターン 家中美思

当日の配信映像はこちらから

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