横浜市市民協働推進センター

取り組み紹介 【終了しました】【対話&創造ラボ 令和3年度|進化思考×協働|社会をアップデートするための【協働】の解像度の高め方 Event Report】

登壇者太刀川さんの様子
2022.2.10 イベントレポート 対話&創造ラボ
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基調講演|進化思考×協働

2021年12月3日に開催された、横浜市市民協働推進センターが行う市民参加型の対話のイベント【対話&創造ラボ】。このイベントは、さまざまな主体の交流・連携から、新たな知を生み出す場として昨年からスタートしています。
今年度は「社会をアップデートさせる“協働”を紐解こう!」をテーマに、さまざまな実践者や研究者を交えて“協働”の価値とその魅力、これから横浜をもっと豊かで暮らしやすい街にしていきたい方々が集う場として開催しています。

今回は今年度第一回、「進化思考×協働」をテーマにした、太刀川英輔さんによるお話をレポートします。

2021年春に出版された太刀川英輔さんの著書「進化思考」をもとに、太刀川さんから「創造とはなにか、そして進化思考をどうしたら深められるか」についてお話をいただきました。
後半では、横浜市市民協働推進センターのクリエイティブディレクター森川を交え、「進化思考と協働」について、さらに理解を深められるトークセッションを行いました。今回はオンラインとオフラインのハイブリット開催。参加者の方々には「イノベーションを起こす体験」の個人ワークも実施。太刀川さんのフィードバックをもらいながら誰もが創造性を発揮できる社会について掘り下げていきました。
また、これからの市民活動・協働のあり方や、横浜をより良くするためにさまざまな主体と出会い、協働していく上で必要なポイントなどについてお話を伺いました。

今回、ご厚意により会場は

京セラみなとみらいリサーチセンターで行いました。

登壇者ご紹介

太刀川英輔さん

NOSIGNER代表 / JIDA(公益社団法人日本インダストリアルデザイン協会)理事長 / 進化思考家 / デザインストラテジスト / 慶應義塾大学特別招聘准教授

希望ある未来をデザインし、創造性教育の更新を目指すデザインストラテジスト。産学官の様々なセクターの中に美しい未来をつくる変革者を育むため、生物の進化という自然現象から創造性の本質を学ぶ「進化思考」を提唱し、創造的な教育を普及させる活動を続ける。プロダクト、グラフィック、建築などの高いデザインの表現力を活かし、SDGs、地域活性などを扱う数々のプロジェクトで総合的な戦略を描く。国内外を問わず100以上のデザイン賞を受賞し、グッドデザイン賞等の審査委員を歴任。主なプロジェクトにOLIVE、東京防災、PANDAID、2025大阪・関西万博日本館基本構想など。著書に学術賞「山本七平賞」を受賞した『進化思考』(海士の風、2021年)、『デザインと革新』(パイ インターナショナル、2016年)がある。

https://nosigner.com/

当日の会場の様子

創造性とは変異と適応の繰り返し?

まずは、太刀川さんの著書「進化思考」についてお話いただきました。

「創造とは いったい なんだ?」

太刀川さんから、「創造性にはパターンがあるし、どのアイデアも実はとても単純に説明することができる。
だからこそアイデアが生まれるかどうかを決定するのは頭のよさやセンスの話ではなく、実は知っているか、知っていないかによるのだ。」
とお話しいただきました。

多くの人が創造性など持っていないと言いますが、創造性教育が行き届けば、誰もが創造性を持てるようになるはず。
現在目の前で様々なものが消滅の危機に侵されており、持続可能な社会を実現するためにも誰もが創造性を身に着けるべき時では?と太刀川さん。

スライド画像

生物の進化の過程に目を向けると、自然の方がはるかに創造が上手だと思い知らされる。つまり私たちは自然から創造性を学びなおすことができるのではないでしょうか?そこで太刀川さんは生物の進化を学ぶことによって人の創造性に生かすことができるのではないかと考え、1つの思想として「進化思考」という考え方をまとめられています。

進化の仕組みとは、変異と適応の繰り返しであり、つまり人間の思考でいうと、変わる知能と選べる知能によって創造性が発揮できるということ。
変異とは、ある事柄(x)に関する当たり前の概念をどんどん壊し、新しい何かを考えていくこと。
適応とは、ある事象xを観察して本質を見抜いて考えること。

固定概念を壊して新しいものを考える変異、そしてそれを観察し何が残されていくべきか考える適応を繰り返すことでより良いアイデアを生み出すことができるのではないか? そのようにして人が創造性を身に着けることで、新たなアイデアが未来を持続可能なものとするのではないか?
と太刀川さん。

スライド画像

以上の話を聞いて、太刀川さんと司会の市民協働推進センターの森川より以下のようなやりとりがありました。

森川: 変異と適応を常に行ったり来たりしながら、最適なものを見つけるということでしょうか?
太刀川さん: そうですね。また、常に本質的な目的に立ちかえって手段を解放することが大事ですね。アイデアがでない人のパターンとは、最初に出たアイデアだけにこだわってしまう人。常に社会の状況に合わせながら、アイデアを変革させていく必要性があります。
進化思考を通じて、一つのアイデアに固執しすぎるのではなく常に社会に合わせながらアイデアを変革させていくこと、常に付加価値が高いものにしていくことを意識する機会となりました。

変異を受け入れる社会と、目的の共通点を明らかにすること

参加者自身がイノベーションを体験するワークでは、
ある事象(x)に関して変異を起こしてみるということと、状況への適応を考えるということを行いました。

例えば、(x)を水筒だとすると、キャップがない水筒など、普段のそれとはかけ離れた状態の(x)をどんどん考えていくことが変異を起こすということです。

適応とは、(x)の未来、過去、内部、外部を考えていくワークです。
例えば(x)を営利組織だとすると、内部は社長、開発、営業、商品、オフィス、未来は副業、兼業、リモートワーク、ホラクラシーなどが考えられます。
そこまでできたら、次に自分が書いたものに対して「なぜ」を問いかけていきます。

そこでしっかり理由を考えてやる必要があるモノを絞っていきます。そうすることでクオリティが高まっていくとのこと。

変異の思考法について、日本人は真面目な方は多いのか、柔軟な発想をすることが得意じゃない場合もある。まずは、間違っても全然大丈夫、とにかく発想を続けて書き出してみる、アウトプットし続ける中で、思考も慣れてくると思います。とアドバイスがありました。

進化思考ワークの様子

対話のセッション

後半は太刀川さんお話を受けて、司会を務めた市民協働推進センターの森川と、またご参加いただいた方々も加わりセッションを行いました。

森川: 創造性を発揮する上で、今の社会では、効率のためということで役割分担がなされていることが多いです。しかしそういったことを背景に、広く考えることが難しくなってきている気がします。そういったことも、変異や適用を考える上で意識しているのでしょうか?

太刀川さん: おっしゃる通りです。全体が見えていないから考えが弱くなってしまいます。例えば会社を経営するなら過去のことから未来、内部のことから外部のことまで、全体を見ることができる経営者が必要不可欠です。

参加者: 変異はイノベーションのためには必要不可欠であることがわかりました。しかし突拍子もないアイデアだからこそ反対する人も多くいます。どうすれば変異を認める社会になるでしょうか。

太刀川さん: 社会全体でもっと変異を認めていく風潮が必要なのかもしれません。同調圧力によって新しいアイデアを実践できないのは本当にもったいないことです。生物の進化の過程から変異が必要なことはわかっています。みんなで変異は必要だということを主張していくことが大事だと思います。
創造性を発揮することももちろん重要なのですが、誰もが創造性を発揮できる社会のためには、社会がアイデアをもっと認めて受け入れていくことも重要だということがわかります。これが誰もが創造性を発揮できる社会のヒントなのかもしれません。

参加者の方:  価値観が異なる人同士で違いをよしとするためにはどうすればいいのでしょうか。
太刀川さん:目標、目的を一致させることが重要であると思います。一緒に目的の本質的なところに到達することが協働です。なぜなら、人々は価値観が異なっていても共通の目的のために集うことができるからです。だからこそ立場が異なる人が繋がる際には目的を見出すことが重要なのだと考えています。

進化思考ワークの様子2枚目


今回の太刀川さんのお話を通して、誰もが創造性を発揮できる社会、また、様々な人と協働していくためのヒントを得ることができました。
いま現在、多くの人が自分には創造性がないと考えてしまっています。しかし目の前のモノをヒントにして変異と適応を繰り返すことで誰もが創造性を持つことができます。それと同時にそういった変異を受け入れる社会も不可欠です。これらを実践することで、横浜はより創造的な都市に近づくのではないでしょうか。

また、「異なる価値観の人同士が、目的の共通点を見出し一緒にそこに到達することで協働が実現する」という言葉は、協働を考えるうえで忘れてはいけません。私たちは普段から様々な人と関わる機会があり、一人一人当たり前に境遇や価値観は異なります。他者との協働を行う上で、何が共通の目的なのかを明らかにするという考え方は大きなポイントであると思います。

プレゼンテーションの様子

今回のイベントを通して、私自身も創造の仕組みについて理解できました。新しいアイデアを出すことはとても難しいことです。しかし、目の前にある事柄について、今ある当たり前の状況とは異なる大胆な使われ方を考えてみたり、過去や未来のことを考えてみたりして、それらを掛け合わせることで新しいアイデアを生むということは、日常生活において少し柔軟な考え方を持つだけで多くの人ができるのではないかと感じました。それと同時に創造性のある社会とは、何かを生み出す人がいるだけではなく、それを受け入れる人も重要なのではないかと思います。確かに一見受け入れ難いものであっても、なぜそれをする必要性があるのかが明らかであれば、実行できる環境があってこそ、創造性のある社会が実現するのだと思います。
私たちは普段生活しているだけで様々な人と出会い、一緒に物事に取り組みます。しかし常に目的の本質を照らし合わせていくことは私自身はなかなかできていないです。多くの人この意識を持つことで、都市の持つ多様性を創造性へと繋ぎ、一緒に何かを成し遂げることができるのだと強く感じています。横浜市民が一人一人この意識を持ち、創造都市横浜、そして市民協働の都市として発展していくのが楽しみです。

書き手 mass×mass関内フューチャーセンター インターン 木村泉紀

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