SDGsをテーマとした官民地域連携まちづくり
2022年3月3日木曜日に横浜市庁舎にて開催された、横浜市市民協働推進センターが行う市民参加型の対話のイベント【対話&創造ラボ】。このイベントは、さまざまな主体の交流・連携から、新たな知を生み出す場として昨年からスタートしています。
今年度は「社会をアップデートさせる“協働”を紐解こう!」をテーマに、さまざまな実践者や研究者を交えて“協働”の価値とその魅力、これから横浜をもっと豊かで暮らしやすい街にしていきたい方々が集う場として開催しています。今回はその第四回、「SDGsをテーマとした官民地域連携まちづくり」をテーマにした、麻生智嗣さん、川原正樹さん、丸野豊さんによるお話をレポートします。
麻生さんは、ヨコハマSDGsデザインセンターの総合コーディネーターとして、多様な主体のマッチング、新規事業のプランニングなどに携わっています。その中でたくさんの事業者と関わっておられますが、今回は「旭区若葉台団地」での取り組みをピックアップしていただきました。
企業・行政・まちの方々等様々な方が関わっている事例を、どう理解し認識していくのか、そのために必要な情報の整理の仕方・考え方を、第2回に説明いただいた「パーパスモデル」を使って説明、ご参加いただいた皆さんとも対話を行いながら進めていきました。
登壇者ご紹介
麻生智嗣さん
ヨコハマSDGsデザインセンター 総合コーディネーター民間コンサルタント会社の主任研究員として、中心市街地活性化基本計画、総合計画など自治体のマスタープランの策定や、多変量解析などのデータ分析、エリアマネジメント、民間と地域をつなぐコーディネート業務などの実績を有する。中小企業診断士。現在は、ヨコハマSDGsデザインセンターの総合コーディネーターとして、多様な主体のマッチング、新規事業のプランニングなどに携わる。
川原正樹さん
MONET Technologies(株) 事業推進部東日本地域事業推進課2005年ソフトバンク(株)入社。2012年より、首都圏エリアの法人営業として、ソフトバンクがもつ様々なITソリューションの提案・導入を行いお客様のコスト削減・業務改善に貢献。2019年1月からトヨタ自動車とソフトバンクのジョイントベンチャーであるMONET Technologiesに参画し、神奈川県・埼玉県・東海エリアを中心にオンデマンドシステムを含めた様々なMaaS事業の推進を行う。
丸野豊さん
一般財団法人若葉台まちづくりセンター 管理事業部兼総務部 部長代理1991 年財団法人若葉台管理センター(現一般財団法人若葉台まちづくりセンター)入社。横浜若葉台の住宅や店舗施設の管理、運営補助、工事提案など、総合的な住宅管理に従事する。また、 2014 年からは横浜若葉台でも想定される郊外型団地特有の課題の整理と解決に向けた施策検討を目的とした「横浜若葉台マスタープラン策定委員会」の事務局を務め、 2017 年に「横浜若葉台みらいづくりプラン」を策定、現在もまちづくり協働プロジェクトメンバーとして施策推進に携わる。
若葉台団地における「オンデマンドバス」とは?
横浜市旭区にある「若葉台団地」での取り組み、「オンデマンドバス」についての説明から始まります。
高齢化率50%を超えるこの団地では、2019年3月より「行きたい時に、行きたい場所に行けるバス(=オンデマンドバス)」の実証実験がスタートしています。地域の足になるように、と始まった実証実験ですが、複数回無料で繰り返し、2022年春からに有償実証実験を行っています。
ゆくゆくはこのバスをヒトだけでなく、モノやサービスの移動や自動化運転を目標にロードマップを設けています。
パーパスモデル(提案時期)
ここで麻生さんより、対話&創造ラボ第2回でとりあげた「パーパスモデル」を使って、提案時期のステークホルダーについて図を共有しました。横浜市とヨコハマSDGsデザインセンターとMONET Technologiesより、若葉台まちづくりセンターへ「オンデマンドバスの実証」の提案を行うところからスタートしています。
若葉台団地の課題とそれぞれの役割
昭和54年に第1期の入居が始まった「郊外型立地の分譲を主とした団地」のため、年齢構成がぐっとあがってきています、と丸野さん。このまま継続すると、住宅団地としての機能が損なわれてくることが懸念されています。若葉台のブランドをあげるための施策として協力したいと思いました。
続いて、配車のプラットフォームアプリを提供している川原さんより、企業の視点から語っていただきます。将来の自動運転社会に資するプラットフォームをつくりたい、そして地域の課題解決と新しいモビリティを開発していきたいと思っています。高齢者にデジタルを使っていただくことも推進していきたいと思っています。
横浜市温暖化対策本部としては、実現に向けた支援を目指しています。意欲ある地域の特性を活かして、課題把握や実証実験を通じて事業化に向けて検討したいです、と市職員である高瀬さん。郊外部の活性化が横浜市の中期4か年計画の中で位置づけられておりますので、関係機関・道路管理者等との協議等のサポートもしていきたいです。
実験が始まり、より多くの方にご利用いただき、取り組みを進めていくうちに地域住民の方々等関係者が増えてきました。
今後の展望について
地域を担っている方々も高齢化していきます。次につなげる世代がなかなか増えてこないため、これから重要視したいと思っています。また、相続に伴う売却も増えてくる可能性があるのでそのための下地作りをしなくてはならないと思っています。と丸野さん。
また、川原さんからは、全国を見ても同じような団地がたくさんあるため、モデルをつくることが大事であるとお話があり、高瀬さんからは家族構成・地域の在り方が変化してくると思うので、地域の様々な団体や人々とのつながり等、協力していくことが大事であり、横浜市としては連携協力して地域コミュニティを寄り添い支えていくことを推進していく必要があると思っています。と話がありました。
トークセッションを通して見えてきたこと | まとめ
このパーパスモデルを見ると一目瞭然、ステークホルダーはこのように増えてきています。今後は地域主体でできるモデルがあったらいいと思っていますが、まだまだ課題は多いです。まとめとしては、以下のようにお話されました。
①各ステークホルダーの思惑と狙いを捉えながらも、どのように社会的インパクトを出し、経済性を発揮して持続可能な経営を行うか、そのためのマネジメントが必要だと感じています。
②パーパスモデルは上記関係者の役割を明確化するともに、自分たちの目指すところを明示するのに役立つと感じています。
③ゴール共有と取り組みの推進を通じて、やるべきこと、やらないことが少しずつ明確化してきており、協働事業の道筋が少しずつ見えてきました。
今回の対話&創造ラボを通じて、いわゆる「高齢化率の高い団地の取り組み」をベースとした話ではありましたが、現代日本のどの地域にも少しずつ形を変えて同じような課題を抱えていると思います。麻生さんもおっしゃっていたとおり、これが形になれば様々な地域の方々のモデルになる話だと思いました。また、持続可能な都市をつくっていくには、関わる人たちが共に考え共にしくみをつくっていく過程もとても大切だと感じました。
全4回を通じて、団体・市民の立場であっても企業の立場であっても、自分の立ち位置を俯瞰する機会や、関わる人たちとの小さな関係づくりを通じて、いつの間にか住みやすい地域を作っていくのではないかと思いました。是非「横浜市市民協働推進センター」へご相談いただき、一緒にできることを模索していきましょう。
書き手 横浜市市民協働推進センター 佐藤貴美