横浜市市民協働推進センター

取り組み紹介 【対話&創造ラボ 令和3年度|協働の実践から学ぼう|鶴見川の総合治水と多様な流域治水の展開  Event Report】

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2022.3.31 イベントレポート 対話&創造ラボ
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「流域思考」による都市再生

2022年1月21日木曜日に横浜市庁舎にて開催された、横浜市市民協働推進センターが行う市民参加型の対話のイベント【対話&創造ラボ】。このイベントは、さまざまな主体の交流・連携から、新たな知を生み出す場として昨年からスタートしています。
今年度は「社会をアップデートさせる“協働”を紐解こう!」をテーマに、さまざまな実践者や研究者を交えて“協働”の価値とその魅力、これから横浜をもっと豊かで暮らしやすい街にしていきたい方々が集う場として開催しています。

今回はその第三回、「鶴見川の総合治水と多様な流域治水の展開」をテーマにした、岸由二さんによるお話をレポートします。

◎当日の配信動画は、ページ下部より動画をご覧ください!

岸さんは、「流域思考」による都市再生を提唱されており、鶴見川流域、三浦半島小網代の森などで実践中です。今回は、災害に備えるために流域全体を俯瞰し、実際に取り組んでおられる鶴見川の総合治水を中心にたっぷりとお話を伺いました。全面オンライン開催となったため、後半では岸さんのお話を元に「自分にできること」をブレイクアウトルームで考え話し合うなど、参加者の皆さんとも対話しながら進めていきました。

登壇者ご紹介

岸由二さん

NPO法人鶴見川流域ネットワーキング(TRネット)代表理事

横浜市立大学生物科卒業。東京都立大学理学部博士課程修了。進化生態学専攻。
流域思考による都市再生を提唱。鶴見川流域、三浦半島小網代の森などで実践中。
NPO法人鶴見川流域ネットワーキング、NPO法人小網代野外活動調整会議、NPO法人鶴見川源流ネットワークで代表理事。著書に『自然へのまなざし』(紀伊國屋書店)『流域地図の作り方』『生きのびるための流域思考』(いずれも、ちくまプリマー新書)。訳書にウィルソン『人間の本性について』(ちくま学芸文庫)、共訳にドーキンス『利己的遺伝子』(紀伊國屋書店)など。

「流域思考」による都市再生のスライド

「流域治水」の適応策文化とは?

まず冒頭、岸さんより流域の話の前に温暖化についての話がありました。

地球温暖化への対策には2つの対策があり、「緩和策」と「適応策」がある。

「緩和策」は、炭酸ガスの排出を減らす、ゼロカーボンを目指す等であり普通の人たちの日常に文化として浸透してきている。

「適応策」は、水土砂災害。こちらは緩和策と違って文化として浸透していない。国・自治体がやるのが当たり前だと思われている。鶴見川に関してのみ、1980年から「流域総合治水」文化が少しある。その文化を支えているのが岸さんの属する「NPO法人鶴見川流域ネットワーキング」であり国土交通省や流域全体の市民等と協働で進めている。

但し、自治体も市民も現場では何が始まったのかさっぱりわからないのが現状ではないか、ということで本日を横浜で「流域を考える適応策文化を育てていく」最初の日にしたい、と岸さんより説明がありました。

流域とは?治水とは?

「流域」とは、雨の水を川の水に変える地形のことであり、「治水」とは、大雨の水が水害を起こさないよう河川・下水道等で工夫すること です。「流域治水」とは、大雨の水が水害を起こさないよう流域全体で工夫すること という説明がありました。

豪雨が起きても、流出が抑えられて流下能力が十分であれば氾濫しません。保水力を増強するには市民にも貢献できることがある。新しい適応文化をこれから作っていける、と岸さんはおっしゃいます。

この危機の背景には、流域の急激な都市開発がありました。鶴見川流域においては、1958年に市街化率10%だったのが1995年には82.8%となっています。

鶴見川に関しては、保水地域対策、遊水地域対策、低地地域対策を行ってきており、町田市が森を守り、流域に5000を超す調整池があります。(=流域対策)但し、調整池や遊水地のみを整備すればいいということではなく、保水・遊水・減災努力を流域連携ですすめることが大事であり、これを理解した上で「適応策文化をつくっていくための柱」についてアドバイスをいただきました。

温暖化適応策への貢献:新しい協働をはじめよう

温暖化適応策文化をつくっていくための柱の1つ目は、「流域学習」です。流域地図を共有する、散策をする、クリーンアップをする、流域治水を探検する等で貢献ができます。

2つ目は、「緑の保水に注目して温暖化適応貢献」。ということで、雨水貯留の工夫、緑の保全・管理、ビオトープづくり等ができる、と岸さん。

そこで、行っている【協働】の形として以下の活動をご紹介いただきました。

①保水をできる木を植える活動を企業とすすめ、市民と共に実際に植えるという活動を町田市で進めているそう。元々笹が群生していた土地があり、笹は保水力がないため、クヌギを植える活動をすすめました。

②横浜市内にある慶応義塾大学日吉キャンパス内でも治水対応を20年続けており、こちらでも保水力・自然再生作業ということで荒れた杉林を全て伐採。クヌギやエノキを植え土砂崩れ防止の森林砂防作業も進めました。

③綱島川辺で、外来植物・花粉を飛ばす植物・危険植物を除去し寄付をしてくれる企業等と在来種を基本として保水力のある植物を植えています。横浜市港北区が国土交通省から土地を借り、NPOと連携して菜の花を植え整備しています。また、在来種のハマカンゾウ・ヤブカンゾウ・ノカンゾウ(キスゲ類)を外来種制圧も兼ねて推進しており、これを応援している商店会と共に、まちの中に保水力のある花園を作っています。

対話(交流)タイム

対話(交流)タイムでは、ブレイクアウトルームを使用して皆さんに2つのことを考えていただきました。対話(交流)タイム

 

講演を聞いてすぐに考えられるものではないことを承知の上で、岸さんが皆さんに考えてもらいたかったのは、皆がこれから少しずつでも外に花を植えて、水がたまるようにすることで「地球温暖化適応策の文化をこの横浜の地で作る」出発点となるからでした。

各家庭の庭に鉢をおいて、雨のかかるところに置くことで適応策文化をつくっている。即ちこれも流域思考の適応策貢献の1つです。「これまでの活動を通して、様々な主体との協働が重なってこれらは実現している。」と最後に協働コーディネーターの鈴木さんがまとめましたが、一団体では達成できない課題であることを参加者が理解していました。

今回の対話&創造ラボが、「適応策文化が始まる一歩目」となるように、ということを叶えるためには、個人・NPO・行政・企業等が協働して広い視点で俯瞰することがとても大事だと知りました。また、どうしても聞きなれない(見慣れない)流域・治水といった言葉が並んでしまうと、自分とはやや遠い話だと思いがちですが、実は身近な話であり生活していれば関わりがあります。

「自分にできることは何だろう」と考えることは、NPOを運営していく上でも関係ある「課題や困りごとを自分ごとにする第一歩」であることも併せて伝えていただいたのだと思いました。

書き手 横浜市市民協働推進センター 佐藤貴美

当日の配信映像はこちらから

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