イベントレポート

【協働トライアルセミナー2022|第2回 協働のイロハを学ぼう  Event Report】

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第2回 協働のイロハを学ぼう

2021年12月から2022年2月まで全5回行われた「協働トライアルセミナー2022」。当セミナーは、地域・社会をよくする活動や取り組みに関心がある方、具体的なアイデアをお持ちの方、協働の手法に関心のある方などを対象に、行政との対話のあり方や事業計画の作り方に触れ、実際の活動に活かしていただくことを目的として行われました。なお、コロナウィルスの感染を鑑み、全回オンラインで実施しました。

第2回のテーマは「協働のイロハを学ぼう」。その様子をレポートいたします。

 

開催概要

【開催日時】
2021年12月21日(火) 18時30分~20時45分

【テーマ】
協働のイロハを学ぼう/市民協働とは~横浜での軌跡、その意義

【スピーカー】
中島智人〔産業能率大学教授・前横浜市市民協働推進委員長〕
岡本今日子〔横浜市民局 市民協働推進課長〕

【ナビゲーター】
森祐美子〔認定NPO法人こまちぷらす 理事長/協働コーディネーター〕

【オーガナイザー】
治田友香〔関内イノベーションイニシアチブ株式会社 代表取締役〕

 

第2回は、「市民協働とは~横浜での軌跡、その意義」と題し、スピーカーとして中島智人さん、岡本今日子さんをお招きしました。中島さんは前横浜市市民協働推進委員長であり、神奈川県ボランタリー活動推進基金(基金21)の審査員もされていることから、市民協働について様々な角度からお話いただきました。岡本さんは横浜市の協働と行政側の取り組みについてお話くださいました。

解決の道筋は多様な主体が協働して取り組むことで見つかる

協働の効果についてのスライド

市民協働事業の基本原則についてのスライド

まずは、横浜市市民局市民協働推進課長である岡本今日子さんから横浜市の協働の趣旨について説明がありました。

横浜市は人口370万人の大きな都市ですが、都市の縮小、単身化の進展、生活困窮層の増大、人口の減少、人口構造・高齢化などさまざまな課題を抱えています。そして、地域社会の課題やニーズは多様化、複雑化しており、困難が複合化している場合もあります。また、区や地域によって課題やニーズが異なっている場合もあり、最近では環境の変化に合わせた対応が必要になっているとのこと。

行政だけでは社会課題の解決は困難であり、性質上対応できない分野や協働により成果が期待できる分野に対して、多様な主体の強みを活かして取り組むことが横浜市における協働の趣旨。また、市民協働条例は、市民の活動や協働の環境を整備するとともに市民の知恵や経験を市政に反映することにより協働型社会を図ることを目的としています。

協働は政策の大きな柱であり、地域との関係づくりを進めるための対応や地域情報の把握役所内での情報共有など、さまざまな施策が各区局で展開されています。個人や一団体、また制度だけでは解決の難しい課題もネットワークを組んで、さまざまな主体が協働して取り組むことで解決の道筋が見えてきます。魅力ある住みやすい横浜市を作るため、これからも一緒に取り組みたいというお話でした。

市民活動団体と行政、双方にとっての協働の意義

中島智人さんのトークイメージ

そして、次に中島智人さんより協働についてご講演いただきました。

まずは市民活動があり、その上で行政との協働があります。何故、行政が市民と協働するのかをきちんと理解することが重要。行政が協働したくなる市民活動団体や、市民活動団体から見て行政と協働しやすい団体もあるので、それを意識するとよいとのこと。

横浜市の特徴は、行政の動きと市民の動きが並行して行われている点。市民の動きは市民協働の形づくりの上でとても重要だそうです。協働はサービスの提供や事業を単に仕組みの中で行うだけではなく、新しい政策立案のためでもあります。横浜市では行政が一方的に決めるのではなく、市民側とやり取りをしながら協働が決められ、作り上げられているという点が特徴だそうです。

市民活動団体にとって行政と協働することは、資源を獲得することだけではなく、社会に対して自分達の活動意義を提示することでもあります。行政と協働を始めた途端にいろいろな人が協力してくれるというケースはよくあること。行政側は協働することによって相手をエンパワーメントしますが、実は市民活動団体も受益者に光を当ててエンパワーメントするという価値があります。

公平を活動原理とする行政にとって市民活動は取り組みづらいことなのですが、横浜市の市民協働条例では、事業の対象者を限定することなく、事業目的が広く社会の利益にかなうものであれば公益的な活動・事業と捉えるとしています。さらに対象者を限定する場合も、多様で個別具体的な市民活動でも、価値を活かすような協働であれば協働事業としていているとのこと。行政側に開かれた窓があると、そこでいろいろなことが始まるというお話でした。

はじめの一歩は相談することから

治田友香さんトークイメージ

岡本  実際にいろいろな実例を経験して、当事者がいろいろ考えて、こうありたいという姿を描き、それを一緒に進めていくことが行政としても大事だと気づきました。

行政は、市民の皆さんのやりたいという気持ち、持っている課題感を上手く生かせる仕組み作りを一生懸命頑張るべきだと思いました。

 

治田  実例を経験することで、協働のパートナーとなるNPOを行政も感度良く捉えることができますね。

協働の事例をひとつ紹介します。「NPO法人肺がん患者の会ワンステップ」は、横浜市の協働提案制度で採択をされ、その後神奈川県の基金21でも採択をされ、現在活動を広げている団体です。理事長自身が肺がんになったときに感じた課題から問題意識を持ち、団体を立ち上げられました。肺がんには患者会がないことを知り、海外事例などを調べながら、ご自身なりに患者らを巻き込む活動をされています。がん教育についても、ご自身が音頭を取って一般社団を立ち上げ、現在は県と協力をしながら学校教育の現場で取り組まれています。

サービス提供と政策立案が繋がれば、自分の発意から身近な協働につなげていけることもできるという好事例だと思います。

 

中島協働事業はエンパワーメントするという点で価値があります。県や横浜市の事業になれば様々な人が振り向き支援をしてくれます。それをきっかけとして、最終的には自立的な活動ができ、いろいろな人を巻き込むきっかけにもなります。

行政側からすれば、委託などだと丸抱えで支援しなければなりませんが、協働なら市民活動団体が持つ資源を動員できます。また、市民活動団体同士の横のネットワークを活用して協働を行うこともできます。さらに、それがモデルになると他の地域でも応用が可能になり、その価値はとても大きいのです。

 

岡本能力をどう生かすかは、さまざまなやり方があります。横浜市も各種手段や制度を用意していますし、必ず何か引っかかるものがあるはずです。まず相談、そして実現方法を一緒に考える、そういった取り組みの一つ一つが協働であり、横浜を良くすることに繋がっていくと思います。是非、一歩踏み出す勇気を持っていただければと思います。

市民協働を進めていくためには、人材育成が必要です。活動したい人が増え、団体を育てていく段階のところもありますので、行政としては市民活動支援と協働の推進をどちらも大事にして進めていきたいと考えます。

 

中島  横浜市の協働に対する姿勢は、市民活動団体にとって財産だと思います。それを自団体の目的の達成のために是非活用してください。そのためには、自分たちが協働に値する相手であるために、どうするべきかを是非意識していただきたいところです。

 

治田  まずチャレンジすることが大事です。横浜市に相談するまたは市民協働推進センターを活用するのもよいと思います。この機会に自身のプランをブラッシュアップしていただければと思います。

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