取組紹介

【With コロナ時代の市民活動 Report.VOL3】ふれあいっこ三ツ沢

ふれあっこ三ッ沢の旗

With コロナ時代の市民活動  Report


取材日:2020.7.15

1 団体概要

子どもの生活課題の解決を目的に、神奈川区三ツ沢地区の主任児童委員・民生委員の有志を中心に、地域のボランティア活動者などにより結成。2017年9月に三ツ沢東町、2018年9月に三ツ沢西町でこども食堂をオープンした。食堂の他、学習支援や体験学習も行う。2020年2月末、新型コロナウィルス感染拡大防止のため活動を休止したが、5月に「食品頒布会」を開始した。

7月15日、代表の小川さん、会長の皆良田さん、会計の大山さんを訪ね、お話を伺いました。

みなさんでのお写真
向かって右から二人目の皆良田さん、大山さん、小川さん(三ツ沢東町にて)

みなさんでのお写真お写真
三ツ沢西町にて

2 コロナ後の新たな活動~食品頒布会~

はじめた時の思いについて

「(小川)3、4月は悶々としていました。例年であれば、学校の卒業式・入学式に出席させていただいているのですが…子どもたちどうしているかなと思っていました。HPに作った料理をアップしたり、できることからやっていったんですよね。でも、やっぱり直接、今まで来ていた子たちに会いたいという思いが強くて」そんな時、沢山の食品がフードロスになっているという情報を知ったという。「ふれあいっこで頒布会をやってみよう!」とスタッフに呼びかけ、動き出した。
「(小川)こども食堂を開催している時に頂いていた地域の農園からの野菜や、主任児童委員仲間のつてでつながった茨城県の農家からの野菜、新子安カトリック教会からのお米の提供も頂くことが出来なくなっていましたが、新たに『食品頒布会という形で活動を継続していきたい』という思いを伝えたところ、『その言葉を待ってました!』と賛同して下さいました」

準備・作業

一方で準備は大変だった。頒布会のための品は、先の野菜や米の他、チラシを頼りに会社を訪ねつながりを形成した生活協同組合ユーコープからのものがあったがいざ頒布会となると、それらだけでは足らず、「フードバンクかながわ」へ行くことになった。「(小川)最初は、東町と西町それぞれ50セット用意したんです。でも足らず、次から120セット用意する事にしました」「(大山)運転ができて、日中食材を取りに行けるのは、小川さんと私だけ。1回の開催に3日ぐらい費やしてあちらこちらを奔走します」その後は、食材の袋詰め作業。「(皆良田)感染リスクを減らすため、あらかじめ袋詰めにすることにしました。何が入っているかは、家で開けてからのお楽しみ」「(小川)地味に大変です(笑)。お米は2合ずつ計って」「(大山)大根は、カットして包んで…」
食材
↑袋の中身一例

結果

それでも始めて良かったと言う。「(小川)いつも来てくれてた子たちがくるじゃないですか。そうすると2、3ヶ月会わなかっただけなのにみんなすごい成長したなあと感じました。やってよかった…と」「(皆良田)名前・学年・町名を聞き取りしてから、物品を受け取ってもらうようにしています。新一年生になったある子は、始まるのを楽しみにしてたみたいで、柱の陰に隠れてじっとこちらを見てたから…おいで!って(笑)」

2回目からは、対象を小中学生だけでなく、一人暮らしの高齢者や、大学生にも広げた。背景には必要な人に必要な支援をという思いがある。「(大山)いままで食堂を利用されていた方だけでなく、掲示版を見て初めて来たという方も結構います。あと、赤ちゃんを連れたお母さんが来たこともありました。対象じゃないからと言うのではなく、来た方にはお渡しするようにしています」

無料で頒布する代わりに、寄付箱を置いている。

寄付箱
↑頒布の様子。写真奥は用意した袋

3 課題・展望

運営資金について

運営資金についての不安もある。「(小川)会の立ち上げの時は、区役所の補助金をもらいました(かながわ地域支援補助金・上限3年)。今は神奈川区社会福祉協議会ふれあい助成金を東町と西町でそれぞれ8万円ずついただいています。補助金は、赤い羽根共同募金などで成り立っているので、来年度は交付金額が減ってしまうかもしれないという不安はあります。」

必要な人に必要な支援を

「(小川)やはり、必要な人に必要な支援をという思いがあります。しかしその情報はなかなか把握できない。感染症の拡大防止の影響で離職してしまったご家庭、様々な理由で生活に困っているご家庭、一人暮らしの高齢者や大学生等…」「(大山)主任児童委員をしていると、小中学校の生徒指導をしている先生との交流があるので、心配な子がいれば、ふれあいっこを紹介していただいています」

スタッフの連携

「(小川)他地域のこども食堂などの情報はあり次第、LINEでみんなに知らせるようにしています。「(皆良田)情報共有は結構マメに する様にしています。『えっそんなことじゃなかった』ということになると後で困るから」

Zoom会議も取り入れるという。「(大山)文章だけだと冷たい印象になったり、『そんな意図で言ったんじゃない』みたいなこともあって(笑)やっぱり会って話さないとだめだよね、でも面と向かってたくさん話すのは難しいし…ということでzoomでもやってみるかということになりました」やり方はみんなで共有したという。今後も情報共有に役立てる。

「(皆良田)小川さんがとにかくみんなが楽しみながらやらないと、活動ってうまくいかないよねって言っていて(そうそう(笑))。いつも会議やるとみんなで大笑いしながら…深刻な問題があっても結局最後はワ~と盛り上がって楽しい気持ちになる。これが続くコツかな。私たちが楽しまないと続かないじゃないですか」

地域への情報発信

ふれあいっこ三ツ沢では自分たちの活動を地域に積極的に発信している。「(小川)6月25日の民生委員・児童委員協議会の定例会で、この間の取組について報告しました」「(皆良田)自治会の役員会と、三ツ沢地区社協の役員会、連合町内会の会議のそれぞれで食材の試食を配りました」

「地域の中にたくさんの、小さな居場所が必要」という思いがある。東町・西町の取組だけでは、その近所の子どもしか来られない。だから、地区全体に広げていきたいのだ。一方、三ツ沢地区には各町内に民生委員が中心となって築いた高齢者の見守りカフェがある。しかし今は、活動が休止している。「(大山)今私たちが取り組んでいる頒布会のノウハウを伝えることで、行動したいと思っている人たちに、ちょっとやってみようかなと思ってもらえると嬉しい」

フードロスの問題についてももっと伝えていきたいと思っている。「(小川)日本ではこうした廃棄食品がたくさんあるけれども、世界を見渡せば食に困っている人がたくさんいる。頒布会だとしゃべることが難しいですからね。どうやって伝えていこうか今模索中です。いつも手探りですよ(笑)」

ふれあいっこ三ツ沢が果たしてきた役割

一方、居場所の再開を待ち望む声も聞かれる。地域の中でふれあいっこ三ツ沢はどんな役割を果たしてきたのだろうか。「(皆良田)一番やんちゃだった子が段々立派なお兄ちゃんになって、下の子の面倒をみるようになった」「(大山)苦手なことが改善されると、もうみんなで大拍手ですよ。そうするとね、脇でオレもがんばるぞ~なんて言っている子がいたりして(笑)」「(大山)お母さん同士が残って話し合ったりしてましたね。ちょっと肩の力が抜けるのではないかと思います」「(小川)東町に関しては、外国籍の方も多いんです。子どもは学校に行って半年ぐらいで言葉を覚えてしまうのですが、母親は日本になじめず『孤立』してしまう。そこで、私たちが日本語を教え、逆に相手の文化を教えてもらえば良いと。道で会うと顔が分かっているので、お互いに挨拶してね。なかなかこういうのがないと繋がれなかったよね」「(皆良田)子どもたちには大学生が人気。宿題を教えてくれたり、くたくたになるまで遊んでくれて」

スタッフにもこんな出来事があった。「(小川)男性スタッフがいるんですけれども子どもの扱いに不慣れだったんです。でも、子どもと関わっていくうちに段々と慣れて来て、今では近所の子どもと遊んだり、外国籍の家族のサポートをしたりとふれあいっこにはなくてはならない存在になりました。そして、今では『本当にふれあいっこのお陰です』みたいなことを言ってます(笑)」また、調理スタッフの「女性チーム」は、もともとは三ツ沢地区で高齢者の配食サービスをやっていたグループだった。担い手の高齢化で解散してしまっていたところ、ふれあいっこで新たな活路を見出した。また、調理の「男性チーム」は、平成24年度に団塊世代の男性を対象に開催した沢渡三ツ沢地域ケアプラザの地域づくりデビュー講座がきっかけで結成した「男の料理サークル」のメンバー。「オレたちも活動できる居場所を探してたんだ」と合流した(なお、男の料理サークルのメンバーの一人と、小川さんは神奈川区地域づくり大学校の卒業生という共通点もある)。町内会館近くに古民家を所有する地域の方も子どもたちの成長に携わりたいと、家を遊び場に提供してくれていた。

小川さんは「大人(親)が元気でないと子どもは笑顔になれない」ということに活動を本当に通して気付いたという。子どもたちの孤食を防ぎたいという思いで始まった居場所は、いつしか地域みんなの居場所になり、みんなで育ちあう場になっていたと言える。

食堂の再開について

「(小川)早く居場所を再開したいという思いはあるのですが」「(皆良田)子どもたちが3密を避けて、横並びに、静かに食べて、ということができるか、調理スタッフをはじめ高齢者もたくさんいますし…何かあったら活動ができなくなる」

先日、沢渡三ツ沢地域ケアプラザが、地域で居場所づくりをしている団体向けにアンケートを実施し、集計している最中とのこと。結果に基づき、「沢渡三ツ沢ルール」を作るということで、今はその動きを注視している(取材日現在)。

「(小川)今は頒布会を続けるしかアイデアが沸かないんですが、他のコミュニケーションの方法を模索中です。

将来的には常設の居場所を作るのが夢だという。「(小川)最初からの願いなのですが、拠点が欲しいんです。色々物件を探したりしたんですが、家賃が高いんですよね。ヨコハマ市民まち普請事業のことも知っていたので空き家物件も探したんですけどなかなか良い物件はないですね」

そんな中、うれしいニュースもある。「(小川)南町在住の方からこの町にも開きたいっていう声があったんです。私たちの活動が認められたのだと、嬉しかったです」

「(小川)これから、ふれあいっこ三ツ沢は居場所を開きたいと思っている人に、今まで培ったノウハウを伝えていければと思っています」

手探りの日々だが、着実に「思い」はつながっている。(2020年7月15日 三ツ沢東町自治会館にて)

【ふれあいっこ三ツ沢】

≪取材後記≫
取材の合間には明るい笑い声が会館に響いた。とにかくみなさん前向きでエネルギッシュ。また、活動の意義や持続することの大切さを認識しているから困難な状況でも試行錯誤をして前進しているのだと感じた。また小川さんは、活動記録を毎回作成し、食材等を寄付していただいた企業や団体、個人に報告しているという。(市民局地域活動推進課)

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