取組紹介

【With コロナ時代の市民活動 Report.VOL1】認定特定非営利活動法人こまちぷらす

活動の様子

With コロナ時代の市民活動  Report

取材日:2020.7.14

2020年春から猛威を振るっている新型コロナウイルス。私たちが暮らす横浜も、他の都市同様さまざま分野や活動に影響が出ています。横浜で活動する数多くの市民活動団体にも、活動中止や活動自粛を行ったりしています。

そんな中、少しずつですがコロナ禍でも出来ることからアクションをはじめている市民活動団体も存在しています。

横浜市ではそういった団体を取材、どのような準備や連携をしながら、活動を始めているのか、現場の声を取材して来ました。

Withコロナ時代にどのような考え方や準備をすると、より良い市民活動の実践に繋がるのか?ぜひ活動を実践している皆さんにとってのヒントに繋がれば嬉しいです。

1 団体概要

こまちぷらすは「子育てをまちでプラスに」を合言葉に、子育てが「まちの力」で豊かになる社会を目指し、2012年に発足した法人です。2014年にヨコハマ市民まち普請事業を利用し、「こまちカフェ」を現在の地に整備。気軽に立ち寄れるコミュニケーションの場を提供しています。
7月14日、代表の森さんにお話を伺いました。

2 コロナ後の新たな活動

 

(1)活動自粛の中での取り組み

令和2年2月末から「イベントスペース貸出」や、「店内イベント」は休止、4月1日からは店内飲食も休止になりました。同時に「手作りマスク」の外販売や、手遊び・演奏の動画配信をするなど、「スタッフが『今自分が必要な活動』と思ったら、決裁なしにすぐやる」という形でスピード感を持ってアイデアを実践されていました。休止した活動が多くありましたが、場を閉じることはせず、いつでも扉は開いている状態を続けられていました。

またファンドレイジングも実施し、1か月で175人から約86万円の寄付がありました。もともと活動は自主財源で賄っており、固定費(家賃・人件費)だけでも財政的に苦しい状況だったことから、寄付は経済的にも精神的にも大きな支えになったそうです。活動自粛が続く中、スタッフには「こんなに簡単にやめていいことをやっていたのか」といった喪失感もあったようですが、スタッフ間で想いを共有し、次を見据えてオンライン事業等の準備をしていました。
実際に提供しているお弁当写真
写真:季節の畑お弁当

そして5月から、各種オンラインでのサービスを開始。「オンラインショップ」では、雑貨やお菓子だけでなく、妊娠中のお母さんやお父さん向けの「オンライン産前産後事業」や子育て中の家庭と繋がる「オンライン子育て広場」の発信もしています。(サービス開始時は親と子ども双方に関わるコンテンツでしたが、保育園への登園が再開し始めたことから今後は保護者と話す会に切り替える予定です)

活動の様子
写真:スタッフのみなさま

(2)場の開き方

7月からは店内飲食が可能となりました。入店時の手の消毒に加えて、1時間半ごとに(1日4回)店内の消毒を行っています。また来店は予約制で、人数は〈大人4人・子ども4人〉と以前までの半分ほどに制限をかけています。今後は敷地内の駐車スペースを使用して屋外にも飲食スペースを設ける予定です。店内のおもちゃの貸し出しは休止中で(消毒可能な木製おもちゃに変更中)、その代わりにスタッフの方が手作りで糸電話を作成されたりしています。

「ゼロリスク(誰もが安心できるリスクがない状態)」はなく、また「回避リスク(感染対策のため何も活動しないことで生じるリスク)」もあることを危惧されています。「回避リスク」は活動自粛期間に浮彫りになりましたが、行政・支援団体などもサポートが十分に出来ていない現状があります。だからこそ、今、団体の存在意義を改めて見つめ直し、そして何ができるか考えているそうです。

活動の様子
写真:スタッフの方お手製の糸電話

「『安心な状態で(場を)開く』というのは主語がいっぱいある」と森さんはお話されていました。「私たち」あるいは「利用者」なのか、そもそも「安心とは何なのか」を考え直したそうです。そして、現状では「誰もが安心できる状態はない」という前提で、「私たち(こまちぷらす)が安心して開けるのはこのあたりだというのをできるだけ分かりやすく」提示することで、利用者の方に「自分はここなら安心して行ける」というところを選んでもらっています。
店内の様子の写真

写真:店内でお食事をとられていた2組の親子

3 課題・展望

◆ 資金面

来店には人数制限を設けており、さらに販売しているお弁当も通常のカフェメニューより単価は低いため、収入は減少しています。加えて、オンライン事業はすべて無料で実施しているため収入はありません。補助金は使用しておらず資金面でも厳しい状況の中、様々な助けのもと続けられています。

◆ オンライン事業

7月時点において、地域の子育て支援拠点などは再開しましたが、定員は以前の半分で予約制となっている状況です。そのような方々の「居場所を作らなくては」という想いがこまちぷらすにはあります。

森さん:「『安心』の捉え方は人それぞれであり、だからこそ『選べるようにする』という考え方を大事にしています。」

実際にお聞きした中で、オンラインでの繋がりが来店に繋がったりと、リアルな場とオンラインの両方の選択肢が様々な繋がりを生みだしていることが分かりました。

このようにオンライン事業の可能性は大きいですが、全てを移行できるわけではないこともまた確かです。だからこそ、「どちらが良い」という考え方はやめて、どちらでも合った方を「選択できる」という形を取られています。「(来店への)背中を押すことは今までできなかった。場が開いて、オンラインもやっているとこんなことができるんだ!」という気づきがあったと森さんはお話されていました。以下のメリットとデメリットを踏まえて、リアルな場と組み合わせながら活動を進めていくそうです。

オンラインのメリット

① 県外、海外などと容易に繋がることができ、遠方の人との出会い・交流が自分たちの“当たり前”を疑うきっかけになる

② 移動・時間の制限のある方にとってオンラインという選択肢が増えた

③ オンラインでつながることで、リアルでもつながるきっかけを生み出す

④ 実際に対面で話すよりも気軽に話せる方もいる

オンラインのデメリット

① 言語化できる「目的型」のことはできるが、目的がはっきりしない、「それとなく」といったことが伝わらない

② オンラインへ参加することの大変さ

(1) Zoomなどのツールに身構えてしまう

(2) 赤ちゃんのお世話をしながら端末の準備や会話に集中することが難しい

これからに向けて

森さんは、「居場所」とは「五感(意識化・言語化されないもの)で感じたり、時間を共有する場所」

だと今改めて感じているそうです。だからこそ、コロナ禍でも「ドアは開いている」「いつでも行くことができる」つまり、「いざという時に駆け込める選択肢がある」ことを大切にしています。締め切らないことで接点を残しておくことができる、この考えは居場所が限られている親子にとって重要な意味を持ちます。その人に合った手段で場と繋がれるよう、切れ目のない支援を色々な形で行われていくそうです。

また加えて、一つの店舗や場だけで生き残るのではなく、互いに支え合い協力して活動を続けられており、「場からまちへ」今まで以上に地域との繋がりも強めて活動を続けられています。
お祝いの様子

写真:向かいのもんじゃ屋さん開業20周年をこまちぷらすのみなさんも一緒にお祝い

【認定特定非営利活動法人こまちぷらす】
〒244-0003神奈川県横浜市戸塚区戸塚町145-6奈良ビル2F
TEL 070-5562-9555
※ご予約は電話です。聴覚障害のある方などは、webの問合せフォームからお願いします

取材後記

6月と7月に2度、お伺いしましたが、この約1か月の期間においても状況の変化に伴い、活動の形に変化がありました。慎重に、かつ素早い動きに驚きを感じました。
印象的だったのは、オンラインとオフラインの両方を経験しているからこそ生まれた気づきについてです。「どちらの場も開いていることで、利用者の方へより多くのアプローチができるようになった。」この視点は、より様々な立場の方への支援にも繋がるものだと思います。森さんもお話されていたように、双方の利点を活かして可能性を広げていくことの重要性を実感することができました。

7月の取材時には、人の赤ちゃんの元気な笑い声が響いていました。少しずつ、「安心」のための環境を整えながらの段階的な活動の進め方やそこに至る考え方など、学ばせて頂く点が多くありました。ご協力ありがとうございました。
(取材:市民局地域活動推進課)

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