取組紹介

【訪問レポート】“地域で育てる子どもたち”認定こども園のびのびのば園の挑戦(港南区)

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“地域で育てる子どもたち”認定こども園のびのびのば園の挑戦

10月16日(月)、関東学院のびのびのば園(以下のびのびのば園)を訪問してきました。
のびのびのば園は、横浜市港南区野庭地域にある認定こども園です。1976年に幼稚園として開園し、2012年に幼稚園と保育園の機能を持つ「幼保連携型認定こども園」となり今に至ります。“地域のすべての人が子どもの育ちを笑顔で見守れるように”という方針のもと、地域との連携を大切にしながら運営されています。地域連携担当が配置され、企業や地縁団体と連携した「地域に開かれたこども園」の取り組みが注目されています。

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“のびのび”育つ園の方針

横浜市営バス「天谷駅」を降りると、閑静な住宅街と野庭団地が広がります。学校帰りの小学生が賑やかに歩いている歩道を少し歩いていくと、「認定こども園 関東学院のびのびのば園」と書かれた大きな建物がありました。

入口に着くと、仲程剛園長先生と、地域連携教諭の石井雄輝さんが温かく出迎えてくださいました。

まずは園内の見学。子どもたちはちょうどおやつの時間で「いただきます」と大きく声を合わせてから、美味しそうに頬張ります。そんな子どもたちの様子を見ながら、間仕切りのない、大きな部屋の特徴を石井さんが説明してくださいました。クラスの間仕切りは、パーテーションで可動式となっており、活動によって使い分けているようですが、子どもたちが自由に行き来出来るように、オープンな空間になっていることが多いようです。担当の保育教諭は複数配置されており、子どもたちを見守る目も多いのが印象的でした。異なる年齢が一緒になることで「子ども同士が教え合う」ことも大切にしているとのことでした。

関東学院大学の先生と取り組んだという子どもたちのアート作品を見ながら、階段を上り2階へ進むと、年長クラスと1歳・2歳クラスのお部屋がありました。置いてあるもの全てが、子どもの年齢とその成長段階に合わせた色々な”仕掛け”が随所に施されたもので、なんと先生たちの手づくり。試行錯誤しながら制作する先生方の様子が目に浮かびました。

建物のあちこちに季節の植物を使った子どもたちの作品が飾られていたり、木育の時間があったりと「子どもたちが”本物”を触って学ぶ感覚を大切にしています」と石井さん。園として、SDGsの観点を大切になさっていると説明してくださいました。

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地縁団体や企業と協働した取組み

一通り園内をご案内いただいた後は、園長先生から改めてのびのびのば園の理念の説明がありました。「『子どもたちの“主体性”を育む』ということについて、『自分たちで選び、行動して結果を出し、結果に責任を持つこと』と考えています」と説明くださいました。また「ある若い職員と『主体性』について話をしていたら、「私は『自分の”願い”を創り出す』ことだと思う」という言葉をくれました」と、笑顔で紹介してくださる園長先生。元々公立学校の先生で、学校と地域のつながりの必要性を感じていたといいます。

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そして、地域連携教諭の石井さんからのお話です。のびのびのば園は地域連携として、地域に園内の一部を開放し、地域の乳幼児親子が安心して過ごせる場「のびのびの場」という居場所の取組みを行っています。コロナの影響で中断した時期もありましたが、近隣にある無印良品 港南台バーズ、関東学院大学 栄養学部 細山田ゼミとともに2022年4月に「親子でつくれる簡単レシピ」集をつくり、おうち時間も親子で楽しんでもらえる工夫をしてきました。レシピは無印良品の商品を活用したもの。同年8月には「いつものレシピ もしものレシピ」と題し、「日常生活で防災を意識できるレシピ」をテーマにしたレシピ集を第2弾として考案・作成。同冊子は、神奈川県内の無印良品店舗他、近隣のケアプラザや地区センター、地域子育て支援拠点などで配布されました(現在は、予定配布数を終了しています)。
コロナが落ち着きをみせたタイミングでは、同じく無印良品の布製のマイバックに絵を描く地域の親子に向けたワークショップを開催し、完成したマイバックを無印良品 港南台バーズに展示するなど地域の親子が“嬉しい場”を地元企業と協働で創出しています。

さらに、地縁団体との連携も。野庭ショッピングセンター内の地域交流拠点「なごみのば」では地区社協とともに、タンバリンづくりのワークショップや、ヨーヨー・輪投げなどの縁日コーナーなどで親子が楽しめる「えんにちあそび」を開催。園の外でも子育ての活動を通して地域に貢献したいと、のびのびのば園が企画し、無印良品 港南台バーズ・野庭団地ショッピングセンターセンター会・横浜市住宅供給公社などの協力のもと実現しました。

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「つながり」の秘けつ

お話を聞きながら、なぜこんなに地域とつながることができているんだろう…?と、疑問が湧いてきました。歴史ある幼稚園(こども園)として、昔から住んでいる地域の方々にもよく知られていることはもちろんベースとしてありながら、それにしても…。

「地域連携教諭」という職員が配置されていることが、まず大きいということがわかります。とはいえ、石井さんがその役割として園に入って7~8年。地域の方々や関係機関と、様々な取組を地域で実践できるまでになった背景に、どのような動きをなさったのか、聞いてみました。

まず石井さんがしたことは、地域を歩くこと。「ここにこんな公園がある」「こんな建物がある」「この時間帯にはこんな人がいる」と、地域を自身の身体を通して体感するところから始めたといいます。そして、周辺の子ども関係の施設や取組みを徹底的に調べ、地域の人や関係機関の職員とつながっていきました。そうした中で、地域の中で子どもの居場所の必要性を感じたといいます。そこで、園の一部を開放し、こどもの居場所活動を開いてみたのが、石井さんの第一歩でした。

地域の人とのつながりに精通している地域ケアプラザから「まずはこんな人とつながってみたら?」と助言をもらったのも、関係を築く上で大事だったようです。まずは個人、そしてその人が活動している取組み、所属している団体の会合に参加…と、段階を経て、ていねいに関係を築いていきました。

「つながり」の価値

お話を聞いていて伝わってきたのは、“地域とつながること”に、価値を見出しているということでした。

地域とつながるって、どのようなメリットがあるの?と、そもそもに立ち返り疑問を抱く人もいると思います。こども園、保育園、幼稚園は、地域の未就学児が集まり、保育・教育活動を受け、小学校へ接続するという役割があります。これらを展開していくには、子どもを見守り、地域で支え合う連携が欠かせません。園長先生・石井さんのお話から伝わってきた「子どもは地域全体で見守り、育てていくもの」という思いを具現化していく取り組みの中に、地域の人や団体、そして企業と連携し、巻き込んでいくことの意義が見えてきます。地域で開催したワークショップで年配世代と子育て世代が出会ったり、子育ての悩みを持つ親同士が出会ったり…。「子ども」を中心とした色々な出会いの積み重ねが、地域ぐるみで子育てを意識することにつながります。

最後に、「このような取組みが横浜市全体に広がってほしい」というお二人の願いを伺ったところで、終了のお時間となりました。

仲程園長、石井さん、今回はお時間をいただきありがとうございました。
横浜市市民協働推進センターとして、地域や企業と連携・協働した取組みを積極的に取材させていただき広く発信するとともに、実践例の情報を蓄積することで、新たな協働を皆さんとともに生み出していければと思います。

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関東学院のびのびのば園
HP:https://nkg.kanto-gakuin.ac.jp/
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