取組紹介

【協働事例】わんわんパトロールで地域を見守る(瀬谷区)

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犬の散歩をしながら、地域を見守る活動があることを知っていますか?
令和5年度の厚生労働省の調査によると、神奈川県は東京都に次いで犬の登録頭数が全国第2位だそうです。神奈川県内でいえば、2位と大きな差をつけて横浜市が第1位の登録頭数です。(登録延べ頭数164,047頭 2023年度神奈川県調べ)
そんな愛犬家が多い横浜市で今回取材したのは、瀬谷区のボランティアで構成される「わんわんパトロール隊」。
新型コロナウイルス感染症緊急経済対策として給付された特別定額給付金10万円を元手に、代表の酒井見依子さんが長年温めてきた想いを形にした活動です。「犬たちの幸せ」に情熱を注ぎ突き進む酒井さんにこれまでの経緯と今後の展望について聞きました。

目印は「みどりのバンダナ」 今日も明日も元気にパトロール!

相鉄線に乗って横浜駅から西へ向かうと希望ヶ丘駅を過ぎたところで車窓の景色が変わります。狭い谷底を縫うように走っていた線路がかつて国境だった分水嶺の丘を駆け上がり視界が一気に開けるのです。ゆるやかな丘陵地に広がるどこまでも歩いて行けそうな街並み、それが瀬谷区らしい風景といえるでしょう。
そんな瀬谷区・三ツ境では、3年ほど前からみどりのバンダナを身に着けた犬の散歩姿がしばしば見かけられるようになりました。彼らこそボランティア団体「わんわんパトロール隊」(以下「わんパト」)の隊員たちです。
「あくまでワンちゃんたちが“隊員”で、ニンゲンは“〇〇ちゃんのパパとママ”なのよ!」と笑って説明するのは「わんパト」代表の酒井見依子さん。酒井さんが親の代から引き継いだ富士見通りの「さかい茶舗」が「本部」として隊員たちの拠点になっています。

協働事例写真
犬と地域を愛する「わんわんパトロール隊」代表の酒井見依子さん

ワンちゃんたちの日課である散歩の機会を“パトロール”に見立てたのが「わんパト」。バス通りから路地裏、住宅地から公園まで、24時間365日、散歩をしながら地域の見守りを行うというコンセプトです。
これまでには、補修が必要な道路の損傷部分や、地中管からのガス漏れ、側溝に蓋をしていたグレーチングの盗難被害などをパトロール中に発見し、本部を通じて所轄の行政や警察などに報告し、適切な対応につながったこともあったそうです。
「わんパト」の隊員数は取材時点(2025年2月7日)で222頭。飼い主含むニンゲンの関係者は500人近くに上るとか。瀬谷区三ツ境からスタートした活動ですが、現在は旭区など周辺地区にも活動が広がりつつあります。

結成は「ワンワン・ワンワンの日」(11月11日)

酒井さんが「わんパト」の構想を思いついたのは2頭目のワンちゃんを飼っていた2010~2015年ごろのこと。すなわち10年近く温めてきたアイデアだそうです。
実現に向けひとつのきっかけになったのは新型コロナウィルス感染拡大初期に全国民が対象となった特別定額給付金でした。
「この10万円でバンダナとのぼりを作っちゃおうと思いついたわけですよ!あとはワンちゃんたちが活動を広めてくれるでしょう!」と酒井さん。
「わんパト」が認知されることで、”有事に同行避難は当たり前”と思ってもらえるようになれば・・・との思いも込めてスタートした活動です。

2022年の夏ごろ、自ら「わんパト」のバンダナとのぼりをデザインし、のぼりは業者に発注、バンダナはボランティアが協力して仕上げ、秋になるころ「さかい茶舗」常連のワンちゃんたちから入隊の勧誘をはじめていきました。
そしてその年の11月11日が「わんパト」結成日となります。この日だった理由はもちろん「ワンワン・ワンワン」の日だったこと、そして数日後に行われる地元自治会の定例会で活動開始の報告をするためでした。
地元との関係について酒井さんは「たまたま親がここで商売をして65年になるので自己紹介からやらずには済んだのはよかった!」といいます。ただし“お茶屋さん”が何かをやりはじめたと訝しむ空気はあったそうで、「実績がないと自治会も行政もなかなか信用してくれない」と痛感もしたとのこと。
作ったのぼりを持って自治会員の個人宅へ説明にまわり、理解を得られるように努めたそうです。
警察署との関係性については、酒井さんが少年補導員として活動していたこともあり、少年事案を担当する署員とは日常的に話ができていたため、その後も円滑なコミュニケーションが続いています。

設立初年の12月24日、「わんパト」に一つの事件が起こります。1頭の隊員(当時生後6か月の秋田犬)がハーネスから抜けて逃げ出してしまったのです。すぐに「わんパト」グループLINEで情報が共有され、パパ・ママたちが一斉に捜索を開始し、3日後に無事保護されました。
実は「わんわんパトロール」という活動自体は全国的に行われていて、横浜市内にも各所に存在していますが、酒井さんが始めた瀬谷区の「わんパト」は、逃走事件の際にも発揮されたような横のつながりが強いことが1つの特徴でもあります。

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逃げ出した隊員No.11の秋田犬「シロタ」が本部にパトロール報告

皆の協力で大成功を収めた「2周年感謝祭」

「わんパト」が横のつながりを作ることに成功している理由として、まず常設の拠点を持っていることは重要でしょう。毎日のように営業しているという「さかい茶舗」は散歩の途中に隊員がいつでも立ち寄れる馴染みの場所になっていて、そこでの出会いや交流はワンちゃんだけでなくニンゲン同士もつなげています。

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次に定期的な⾏事の存在です。「わんパト」では毎⽉満⽉の夜に「観⽉会」を⾏っています。
何をするわけではないけれど、隊員が有事の際に顔見知りになっていれば少しでも不安が和らぐのではないか?との思いで、子どもたちが利用する日中を避けた夜の公園で隊員同志が交流を深めています。

そして毎年開催するお祭りです。
2024年11月17日、瀬谷区役所に隣接する二ツ橋公園の芝生を借りて、活動2周年を祝うイベント「わんわんパトロール隊2周年感謝祭」を開催しました。
ワンちゃんたちのファッションショーや似顔絵コーナー、災害救助犬による実演、ペットフードメーカー協賛の試食品コーナーのほか、ナゾときや野菜の朝市、「瀬谷の逸品」に認定されているフードの販売など、地域住民が誰でも楽しめる企画を大々的に展開し、一日で約1,500人の方の参加がありました。
瀬谷区のマスコットキャラクター「せやまる」や三ツ境南口商店街のマスコットキャラクター「ミックル」が訪れるなど、区や商店街の協力もあり、子どもたちも多く集まりました。
地域住民、自治会、商店街、行政、企業、近隣高校生のボランティア、地元のマスメディアによるPRなど、多様な主体がそれぞれ出来ることを協力し合ったことが、成功の鍵となりました。

実は「わんパト」は同規模のイベントを1周年の時にも行っています。その時は天候不良もあり来場者は800人だったと酒井さんは悔しそうに振り返りますが、当時の団体の規模を考えると準備が大変だったと想像されます。それでも高い目標にチャレンジしたことで、組織の団結は強まり、地域における知名度も高まったのです。そんな大イベントを成功させてきた酒井さんについてメンバーから話を聞くと「200頭以上のワンちゃんの顔と名前をすべて覚えている」など実に細やかな人となりが語られます。また「わんパト」ののぼりを立てるのに協力してくれた老舗の豆腐屋さんが健康上の理由で移動販売をできなくなった時には、「さかい茶舗」で豆腐の注文をとるようになったそうです。酒井さんのお人柄が、この活動を成功に導いていると感じるエピソードを聞かせていただきました。

安心・安全なまちづくりにも貢献

「わんパト」隊員による見守りの真価は安心・安全に関わる領域でも発揮されてきました。
2023年秋の夕方、二ツ橋公園で認知症の高齢女性が保護されました。朝の散歩時に見かけていた高齢女性が夕方になっても座っていることに気付いた隊員が、すぐ隣の区役所に通報したのです。朝夕同じコースをパトロールする「わんパト」隊員ならではのお手柄でした。

また、夜道の一人歩きという不安に寄り添ったこともありました。終電の時間帯に駅前をパトロールしていた隊員と家族が、一人で歩いていた若い女性から「一緒に歩いてもらってもいいですか」と声をかけられたそうです。その女性からは後日警察を通じて感謝が伝えられました。まさに“24時間365日の見守り”というキャッチフレーズにふさわしい活躍ぶりです。酒井さんは「ワンちゃんがバンダナを巻いているから話しかけやすかったのよ!」と分析します。

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地域に認知された「わんパト」隊員の証、緑のバンダナをつけてスマイル

着実に隊員を増やし、実績を積んできた「わんパト」。今後の目標は300頭でオリジナルの共済保険を作り、安心してパトロール活動を継続していくことだそうです。法律だけではない様々な壁がある険しい道のりのようにも思えますが、立ち上げから2年でここまでネットワークが広がった「わんパト」なら、いつか実現してしまうかもしれません。

ワンちゃんをきっかけに人と繋がる安心安全な地域は、誰にとっても暮らしやすいまち。
みどりのバンダナを見かけたら、気軽に声をかけてみませんか?隊員も、隊員の家族も笑顔で応えてくれることでしょう。

ここ瀬谷区・三ツ境には、犬と人の共生を通じたまちづくりのヒントがたくさんありました。

編集後記

インタビューをしている最中にも、次々と本部の茶舗にやって来るパトロール中の隊員たち。小型犬から超大型犬まで、人犬見知りから超社交的な子まで個性あふれる隊員たちですが、日々のパトロールによる実績は上々、地域の防犯、防災、見守り、コミュニティの活性化に貢献しています。
地域や行政の理解を得ることが難しかった時期もあったそうですが、24時間365日の活動が実を結び、隊員と共に理解者・協力者も増え、「わんパト」の輪は確実に広がりつつあります。
まさに「継続は力なり」。「わんパト」の今後の活躍がさらに楽しみです。

わんわんパトロール隊 Instagram(外部リンク)
https://www.instagram.com/wanpato.yokohama/

今後も横浜市市民協働推進センターでは、市内各地のさまざまな協働事例を紹介してまいります。

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