取組紹介

【With コロナ時代の市民活動 Report.VOL2】特定非営利活動法人さくら茶屋にししば

お店の前でのおふたり

With コロナ時代の市民活動  Report


取材日:2020.7.13

1 団体概要

2009年に現在の「さくら茶屋にししば」の前身である「西柴団地を愛する会」が結成され、翌年2010年にヨコハマ市民まち普請事業を利用し、「さくら茶屋」がオープンしました。地域のつながりを作り、多世代交流を進め、安全安心なまちづくりのために活動しています。「さくら茶屋」と隣にある「さくらカフェ」の2つの拠点があります。

代表の岡本さん、副理事長の炭竃さんを訪ね、お話を伺いました。

お店の前でのおふたり
代表の岡本さんと副理事長の炭竃さん

2 コロナ後の新たな活動

⑴ 非常事態宣言を受けて

令和2年4月の1週目は通常営業、2週目はテイクアウト販売のみ、非常事態宣言の発令後の3週目からは休業していました。担い手であるボランティアが高齢者であり、感染防止・安全確保のため、やむを得ず休業という選択となりました。

休業時においても、利用者の方々がどのような状況にあるのか、ある程度の実情が分かったそうです。それは、今までの活動で、来られる方の状況などを把握できていたからこそでした。「誰がどう困っているか」「こんな風に困っているのではないか」という様々な例を岡本さんからお聞きすることができました。地域の中でお弁当を重宝されている方は多く、「再開を待っている」という声は休止中も聞こえてきたそうです。その声は、本当に生活する上で困っている方と、長く利用されていて少し不自由だと感じられている方の両方の声だとお話されていました。

⑵活動再開

5月11日に再開について団体内で協議。ボランティアからは、感染を心配して「もう少し待ちたい」という声が多く聞かれたそうです。翌週18日に、改めて一人ひとりに意思確認を行い、活動再開に賛成する人が25人ほどいたため、6月からの再開に向けた準備をしてスタートすることとなりました。この際も不安に思う声はあったため、再開時の進め方には気を付けたそうです。

販売したお弁当
お弁当などのテイクアウト販売

6月1日からはさくら茶屋で作ったお弁当や総菜を11時から2時の3時間のみ、「さくらカフェ」で販売することにしました。その商品を7月からは「さくら茶屋」に移して販売し、「さくらカフェ」では買ったお弁当をカフェ内で食べることが可能となっています。(火曜日のみ揚げたての天ぷらの提供があります!)お話するのを楽しみに来店される方も多いですが、テーブルは交互に座り最大でも7~8名まで、お食事後はなるべく早くお帰り頂くよう貼り紙もされています。
貼り紙
感染対策のための貼り紙

また「さくらカフェ」のいくつかのイベントは制限付きで開催します。横浜市介護予防・生活支援サービス補助事業として行われている介護予防プログラム「元気ライフ」もその一つです。以前は20人ほどが集まって活動していましたが、現在は2グループに分けて行っています。その際に食事の提供はせず、お茶と個包装のお菓子を提供しているそうです。この活動を1週間の楽しみとされている方もあり、実際、「元気ライフ」の休業中に体調を崩される方もいらっしゃったそうです。高齢者の方々にとって週に1回活動に参加することが、心と体の健康につながる大切な習慣となっています。

活動の様子
「元気ライフ」の様子

ただ「さくらカフェ」でのイベントの中心であった子育ての居場所や子ども食堂などは引き続き休止、そのスペースでフードバンクの活動が行われています。カフェ店内には、休業前最後の子どもイベント「ひな祭り」の装飾の名残があり、子どもたちが来られるようになる日を待っているようでした。岡本さんや炭竃さんは、子どもやお母さん同士の集まりが再開できていないことに危機感を感じられていました。

⑶感染対策

入店時はマスク着用・体温測定・手の消毒などが必須となっています。スタッフ通信ではそのような対策だけでなく、もし感染・発症した場合にどうすべきなのかも伝えています。差別を生まないため、また二次感染を防ぐためにも感染がわかったら情報を伝え、周囲も当事者を責めないことが大切であると示されています。

スタッフ通信
スタッフ通信

3 課題・展望

<コミュニティカフェの役割>

10年間培った繋がりからお弁当の需要はありますが、そのようなテイクアウトの形にお客さんが慣れてしまい本来のコミュニティカフェが持っている役割が薄れていることを感じられています。岡本さんは「お弁当屋さんになってしまったような気持ちになる」とお話されています。テイクアウト販売が再開されたことはスタッフと利用者双方にとって嬉しいことに変わりはありませんが、感染対策を取りながらコミュニケーションをとることの難しさがあります。「話したい、けれど安全面から帰ってほしい」というジレンマが生じています。始まって1年ほどの新たなイベントも、参加者との関係が作られてきた頃に休止となるなど、活動の輪が途切れてしまうことが懸念されます。コミニュティカフェの役割をどのようにしていくのかさくら茶屋スタイルを模索していきたいとのことでした。

販売している様子
お弁当販売の様子

<資金>

「元気ライフ」は横浜市介護予防・生活支援サービス補助事業のため、〈さくらカフェ〉に対する家賃補助があります。公的支援があり助かりましたが、来店される方は以前よりも少なく、密を避けるため回数を2回に増やしたことで準備に時間がかかります。このことから資金・労力面で引き続き工夫が必要です。

さくら茶屋は、4月、5月は営業停止のためほとんど収入はなかったのですが、支出は家賃や材料費などに限られスタッフはボランティアで活動していたので人件費がないことが幸いしました。

~これからに向けて~

日用品・お弁当の販売は地域の方々の生活を、少しずつ再開してきたイベントは参加者である高齢者の健康や元気を支えています。「ミニ弁」といった通常よりも少ない量のお弁当の販売を始めるなど、来られる方の声をもとに様々な活動を続けられてきた「さくら茶屋にししば」は、コロナ禍においても地域のニーズに合った活動を続けていきます。所属する多くのスタッフの多様な意見も尊重しながら、このようなお弁当販売と高齢者向けのイベントを中心に行いつつ、コロナの情勢を見ながら子どもイベント関係も再開していきたいというお話でした。

【認定特定非営利活動法人さくら茶屋にししば】
〒 236-0017 横浜市金沢区西柴3丁目17-6
茶屋  TEL・FAX 045-516-8560
カフェ TEL    045-877-3866

【取材後記】

品数も多く手作りの温かさを感じられるお弁当はとても魅力的です。最近は特にミニ弁が人気らしく、取材日(12時30分頃)も完売でした。「量は少なく作っているのについおかずをたくさん入れてしまうんです」と笑ってお話されていた姿に、岡本さんや炭竃さんをはじめ、スタッフの方の温かさも感じました。地域の皆さんがさくら茶屋に来られる理由は、立地面のみならず、さくら茶屋の温かい雰囲気や繋がりからなのだと感じました。

お話をお聞きする中で、子どもたちから高齢者まで幅広い世代の方々に関して考えられていることが伝わりました。そしてその方々の「ニーズや願いに基づいて活動されているからこそ、さくら茶屋の活動は続いてきた」という言葉が印象的です。コロナ禍において現状やニーズが変わってきている中において、「声に基づいて実現する」ことの重要性を改めて実感させて頂きました。

(市民局地域活動推進課)

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