横浜市市民協働推進センター

取り組み紹介 【訪問レポート】いずみ野の食農教育が結ぶ、地域活性化の取組(泉区)

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2024.7.4 訪問レポート
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いずみ野の食農教育が結ぶ、地域活性化の取組(泉区)

2024年5月9日(木)、いずみ野小学校の学校地域コーディネーターで、学校の地域協力団体「いずみ野サポーターズ『田んぼでGO』」の一員であり、市民協働推進センターの協働コーディネーターでもある大木節裕さんを案内役として、いずみ野地域の食農教育や地域づくりの現場に伺いました。

泉区は横浜市の南西部に位置し、水と緑が豊かで自然があふれる地域です。
特にいずみ野地域は、その豊かな資源を活かした田んぼや畑の農業が盛んであり、世代や立場を超えた交流により、高齢化や担い手不足などの課題に向き合っています。

13時、相鉄いずみ野線いずみ野駅改札に集合し、大木さんからいずみ野についてのレクチャーを受けた後、センター職員、横浜市の職員、泉区の職員含め総勢10名で、現場視察へ出発しました。

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地域交流のマルシェが盛んないずみ野駅を出発します

駅前の店舗を過ぎ、閑静な住宅街を抜けて10分もすると、のどかな田園風景が広がります。
和泉川沿いに整備された遊歩道「和泉川健康のみち」を進んでいくと、近くでキジやウグイスの美しい声が聞こえてきました。

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青空の下、大木さんの案内で遊歩道「和泉川健康のみち」沿いを進みます

小学生が農業体験できる田んぼ

遊歩道沿いには、いずみ野小学校5年生を中心とした子どもたちが地域の農業指導者のもと、ボランティアの協力も得ながら稲作を行っている「いずみ野田んぼ(栽培収穫体験ファーム)」がありました。田植えから稲刈り、脱穀、もみすりまで子どもたちの手で行うそうです。収穫したお米は小学校で加工・配布されるなど、子どもたちは自ら育てたお米を味わい、食農教育を学びます。

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小学生が育てる田んぼ 6月は泥んこ大会が催されました

かけはしの「わくわくのうえん」

「いずみ野田んぼ」の少し先には、以前取材に伺った、子どもたちの居場所創りに取り組む一般社団法人かけはしの子どもたちが農業体験を行う畑「わくわくのうえん」がありました。
いずみ野小学校卒業生農家の横山勝太さんの土地をお借りして、インゲンなどを育てているそうです。

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かけはしの子どもたちが育てる畑です

【訪問レポート】かけはしの活動―いちょうコミュニティハウス(泉区)
https://kyodo-c.city.yokohama.lg.jp/case/visit-report_20231025/

その先には、同じくいずみ野小学校卒業生の農家の方の畑を借りて、JA横浜協力のもといずみ野小学校2年生が中心に育てるサツマイモ畑もありました。

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秋の収穫が楽しみなサツマイモ畑です

地産地消に貢献する「横山農園 いろどり畑」

次に訪れたのは、横山勝太さんのハウス「横山農園 いろどり畑」。
ハウスいっぱいに、色づき始めた大小さまざまなトマトやズッキーニ、エンドウ豆やトウモロコシなどが栽培されています。秋には、一般的な白色のほか、オレンジ色や紫色のカラフルなカリフラワーが収穫の時期を迎えるそうです。

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真っ赤なトマトが美味しそうに実っています

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ハウスに広がる立派なとうもろこし畑です

横山さんが育てる新鮮でおいしい野菜は人気が高く、泉区の飲食店をはじめ、区外の飲食店からのお声がけも多いそうです。こだわり野菜を求めて、飲食店のオーナー自らがハウスへ直接収穫に来ることもあるとか。
横山さんの野菜は、飲食店に卸されている以外に、スーパーや直売場でも手に入れることが可能です。また、いずみ野小学校が進める地産地消の取組「スーパー給食(※)」にも取り入れられています。

※スーパー給食とは
「濱の料理人」監修のもと、地域の農畜産物を使って小学校の給食を提供することで、地産地消を推進し地域の魅力を発信する取組です。
「濱の料理人」は、料理人による新しい地産地消のプロジェクトとして「横浜市を全国に誇れる『地産地消』の代表都市にする」という理念のもと2010年に発足した有志の団体です。

今回の案内人大木さんと横山さんは旧知の仲で、横山さんが幼少期から交流があるそうです。「大人になり、大木さんと一緒に活動が出来るようになって嬉しい」と大木さんと目を合わせます。

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オーナーの横山さん(右)と大木さん(左)

横山さんは、幼少期に不登校になりかけたことがあったそうですが、地域の農業体験から農業の楽しさを知り、乗り越えることができたそうです。
「自分自身が救われた農業で、同じ悩みを抱える子どもたちの活力を引き出すきっかけを作りたい」
この思いを根底に、農業を続けているそうです。

学校に行くことが難しい「かけはし」の子どもたちと一緒にサツマイモの収穫をしたり、これから育てる野菜を一緒に考えたりして、農業の楽しさを伝えています。

横山さんが腰を痛めていた時期には、「かけはし」の子どもたちが収穫を手伝いに来てくれたこともあったそうです。「子どもたちに助けられた」と当時の様子を笑顔で振り返る横山さん。一方通行ではない、お互いを思いやる良い関係性です。

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子どもたちの心に寄り添い農体験をサポートする横山さん

横山さんに、これからやりたいことをお聞きしたところ、「ひまわり畑を増やしていきたい」とお話しいただきました。
ひまわりは咲き終わった後、ゴミではなく肥料として活用することができるそうです。
太陽に向かって咲き誇るひまわり畑のさわやかな景観が、今から楽しみですね。

若きオーナーパティシエのお店「白嬉」

最後の訪問先はいずみ野駅から徒歩数分、昨年2023年7月にオープンしたカフェ「白嬉(しろき)」。
「心と体をハッピーに」をコンセプトに、こだわりのスイーツを提供しています。

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外のテラスはペット同伴OKのカフェ「白嬉」

「しろき」の名のとおり白が基調のおしゃれな外観と内装は、知り合いの地元材木店・建築士に協力してもらったそうです。
地域の集まりの場としても利用されている白嬉。
「地元でみんなつながっている」とオーナーでこちらもいずみ野小学校卒業生の大月里那子さんが笑います。

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ふんわりもっちり、地元の卵を使ったロールケーキは一番人気

「泉区産の卵は新鮮で身の入りがいいんです」という言葉どおり、地元の農産物を積極的に取り入れて作るスイーツは、まさに絶品でした。横山さんの農園の野菜を使ったスイーツもあるそうです。

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オーナーの大月里那子さんが目指すこれから

昨年は、地域から敬老の集いに配るお菓子の依頼があり、180人分のお菓子を焼き上げとか。
「今後は、アレルギーに対応したスイーツなど、リクエストに合わせたスイーツも作っていきたい」、とこれからのことを語っていただきました。

ゆるやかにつながり、次世代へ

いずみ野地域は、食農教育をベースにまちづくりに取り組んで40年以上。世代は第2、第3世代へと移りつつあります。地域住民、農家、小学校のほか、企業、区役所、相鉄などさまざまなステークホルダーがゆるやかにつながり、お互いに良い関係を維持しながらいずみ野の地域経済、少子高齢化に貢献しています。協働のポイントが多く得られる取組です。

最後に、長年いずみ野の地域活性に取り組まれている大木さんの経験から、次の世代の担い手づくりについて、5つのポイントを挙げていただきました。

①1人ひとりの顔の見える関係からの三方よしを念頭に、
②なるべく子ども・食べる・農など汗かく共有作業など共感されやすい事を絡めて、
③楽しい事、好きな事、得意な事などからの、この指とまれの緩やかなつながりづくりを、
④既にある社会資源を再発見し活かすなど、
⑤まずはちょっとしたことや、ついでのことなど、小さな事からの好循環を目指して

それぞれの地域の魅力・特性に置き換えることで、ほかの地域へも展開できるポイントではないでしょうか。

訪問後記

2013年、横浜市と相鉄ホールディングス株式会社は「相鉄いずみ野線沿線の次代のまちづくりの推進に関する協定」を締結しています。これにより相鉄いずみ野線沿線 次代のまちづくり (Future City Project=FCP) が進み、各駅が再開発され、様々なイベントが開催されるなど、盛り上がりを見せています。
いずみ野地域も例外ではなく、郊外の住宅地が抱える少子高齢化などの課題に向き合いつつも、地域の資源を活かし、多世代が交流できるまちづくりが進んでいます。
活きた水と豊かな緑に囲まれたいずみ野には、地元愛溢れる皆さんの笑顔がありました。
今後のいずみ野地域の“進化”が楽しみな訪問となりました。

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白嬉のスイーツを堪能しながら、いずみ野の魅力を語り合います

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