横浜市市民協働推進センター

取り組み紹介 【対話&創造ラボ トライアルスタジオ vol.1 Event Report】

セッションの様子
2021.4.12 イベントレポート 対話&創造ラボ
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0を目指す

2021年1月22日(金)に横浜市協働推進センターで開催されたCSV・SDGsを志向する企業発・公開企画会議「トライアルスタジオ第一回目」のイベントレポートをお届けします。

セッションの様子
写真:会場の横浜市協働推進センター(横浜市庁舎1F)

今回のイベントでは「ゼロ・ウェイスト」実践の機会を共創する一般社団法人ゼロ・ウェイスト・ ジャパンの活動紹介と、アパレル店舗のパタゴニア横浜・関内ストアで取り組む、アパレル店舗ならではの “ゴミを出さない” チャレンジに注目。何から始めるといいのか、どんな準備が必要なのか?などなど お伺いしました。

登壇して下さったのは、一般社団法人ゼロ・ウェイストジャパンの坂野晶さん、奥野光久さんとパタゴニア横浜・関内ストアの市原 壮一郎さん、増山理人さん、山本恵子さんです。

ファシリテーターは横浜市市民協働推進センターの吉原明香と、クリエイティブディレクターの森川正信が行いました。

横浜市のゴミ・資源の課題と取り組み

プレゼンテーションの様子
写真:横浜のゴミ・資源の問題に関する説明・紹介 佐々木さん

はじめにゲストの方々のトークに入る前に、横浜市資源循環局の佐々木 健さんより、横浜市が取り組む3R夢プランについてお話をいただきました。

「このプランは焼却・埋立処分を中心とする廃棄物対策からの推進をはかり、循環型社会を構築するために策定されたもので、G 30を引き継いで平成23年1月にできました」

ゴミの分別、リサイクルをはじめ、ゴミとなるもの自体を減らすリデュースに取り組み、環境負荷の低減や資源エネルギーの有効利用、さらには安心と安全につながる安定したゴミの適正処理を図ることで、豊かな環境を後世に引き継ぎ、子供達が将来に「夢」を持つことのできる社会の実現を目指しているそうです。

横浜市の課題の一つに、南本牧にある同市唯一の最終処分場の延命があるとのことで、「策定時の埋立量でいくと、残り30数年で限界を迎えるため、各種ゴミの減量化、資源化を進め、これを50年に延ばすためにも、更なる減量に取り組む必要があります」と佐々木さん。

実際の取り組みについて、例えば食品ロスへの取り組みについては、横浜市食の3Rキラ星活動賞という制度を実施しているそうです。

「食品廃棄物の発生抑制、再生利用、および啓発等の3分野において、模範となる取り組みを行って顕著な功績を上げている事業者等を表彰し、その取り組みを広く紹介することで食品廃棄物のより一層の削減を図ることを目的としています」

令和二年度に表彰された企業の一つに株式会社横浜ビールさんがあります。
主な取り組みとして、横浜市内にある醸造場のビール製造工程で発生するウォルトカスや、市内直営レストランで販売される食品残渣を堆肥化し、その堆肥で栽培した野菜を直営レストラン等で提供する、食品のリサイクルループを構築しているそうです。

最後に佐々木さんより、
「今後一人一人がマイバッグやマイボトルの持参など、身近でできることから始めると共に、引き続き今回の事例で紹介したように、様々な形で市民、事業者の皆様と連携して取り組み、より一層ゴミの減量・資源化を進めて行きたいと思います」と抱負をいただきました。

ゴミは”社会のエラー”

登壇者によるプレゼンテーション
写真:例を交えながらのお話は具体的で明確 坂野さん

続いてぜロ・ウェイスト・ジャパンの坂野さんから、そもそもゼロ・ウェストとは何か?現在どんな取り組みを行っているのかご紹介いただきました。

「ゼロ・ウェイストという言葉は直訳すると、ゴミ、無駄をゼロにすることです。ゴミ自体は私たち、社会の仕組みの何かのエラーで生まれているものだと思っています。自然界にゴミってないですからね」

元々は、坂野さんご自身徳島県上勝町でゼロ・ウェイストの活動に5年ほど取り組んでいました。その経験を生かして、より広い範囲で活動をしようと考えたのが設立のきっかけになっています。

「SDGsの12番目にも、『つくる責任 つかう責任〜持続可能な消費と生産のパターンを確保する〜』と定められているように、2030年までに圧倒的に廃棄物を減らしていく必要があるということが、世界的ゴールとして設定されました」
大きな要因として世界的な人口増、かつ生活水準が上がることでゴミがますます増えているデータがあげられるとのこと。

また、日本では1970年代、1年間で回復できる量の資源ぐらいしか使っていなかったのが、一昨年には7月ですでにアースシュートオーバーデイ(1年間で地球自ら回復できる資源の量は限りがあるが、その量を使い切ってしまった日)を迎えてしまったそう。「これは未来に取っておかないといけない量をすでに前借りしている状態にあります」と坂野さん。

活動の背景には、このような問題があったのですね。更にこれらの問題は経済活動にも影響を及ぼすため、経済モデルも変化させていく必要があるそうです。

「今までのように、作って、使って、捨てるリニアエコノミーからすでに社会にできたものは、ずっとそこで循環できるように仕組みを変えていくこと(=サーキュラーエコノミー)が大事」と教えてくださいました。

例えば、ドイツでは地域限定のコーヒーカップを作り、地域内のカフェなら利用後は、どこにカップを戻してもいいという仕組みを作ったそうです。
では実際にゼロ・ウェイストを進めるにはどこから手をつければいいのでしょうか?

「まずは小さな単位で色々仕組みを作っていくことがいいのではないかと思います」と坂野さん。
その仕組みの一つがゼロ・ウェイスト認証だそうです。活動に取り組む事業所をゼロ・ウェイスト・ジャパン独自の基準で審査し、認証。認証されたお店は認証店マップに載るため、それを元にお客さんがくることもあるそうです。

初めは飲食業界で始めた認証でしたが、この第二段階として選んだ業界が、アパレル業界でした。

集めて、仕分けて、可視化する

セッションの様子
写真:社員の多くが自然をライフスタイルに入れているというパタゴニアの皆さん
左[森川さん] 中央[市原さん] 右[増山さん]

続いては、実際にゼロ・ウェイスト認証を取得して活動をされている、パタゴニア横浜・関内ストアのお三方にお話をお聞きしました。

パタゴニアはアメリカのカリフォルニア州ベンチュラに本社をおく、アウトドアのアパレル販売を行っている企業です。

山本さん:
「2015年当時、ゼロ・ウェイストの活動はまだ知りませんでした。スタッフの勉強会で、ある一人のスタッフが海洋ゴミの話をしてくれました。
その時、知らなかった現状にみんな驚いたんです。そこから、とりわけBIG4、
使い捨てプラスチック(=シングルユース)をみんなで減らしていこうとしたのがきっかけです」
※使い捨てプラスチックの”Big 4″=ペットボトル・レジ袋・ストロー・カップ

その後、そのスタッフの知り合いのカナダ人の紹介で、ゼロ・ウェイストの存在を知り、活動をより広げていくことになったそうです。

市原さん:
「初めは店舗で出るゴミを集めて仕分けしていきました。どのようなゴミが出ているのか見える化したのです。そして、このゴミはどうやったら減らせるのか考えていきました」

取り組みの一つで、引き出しの中の備品全てに位置を決め、番号をつけたそうです。整理して可視化することで、不要な備品を買い足すミスもなくなり、いつも皆んなが使ったあとは、違う場所に置かれていた備品が、元の定位置に戻すようになったとのことです。

ゼロ・ウェイストをしつつ、物を探す手間も省けて、一石二鳥の素敵なアイディアですね。活動で大事なことは、両軸で進めることだそうで、

市原さん:
「一人一人が楽しんでゼロ・ウエイストを学んでいくこと。もう一つは限りある資源をゴミにさせない、
デザイン、調達、オペレーション、廃棄までの循環できる仕組みを作って、
地域コミュニティに還元していくこと」と教えてくださいました。

関内ストアさんはアパレルゼロ認証を日本で第一号として2019年10月に取得。
2020年の更新時は9項目のうち7項目を獲得しました。認証を受けたことで、今後の課題も見えてきたそうです。

市原さん:
「これからはみんなで取り組んでいかないと、目標の削減は実現できないっていう実感があります。みんなで協力していくフェーズになっていると思います」

横浜・関内ストアさんが、皆んなで楽しみながら取り組んできたことやゴミをはじめ、備品なども整理して可視化することで、課題を見つけてきたことなど、これらの姿勢はこの問題に限らず応用できる範囲は広いなと感じ、とても参考になりました。

秘訣は楽しんで学ぶこと

プレゼンテーションの様子
写真:”楽しむことを大事に” 山本さん

各団体の取り組みをお伺いしたところで、更に意見を交換するため、登壇者の方のトークセッションを行いました。

吉原さん:
「経営者の人たちで、環境問題に取り組まなければいけないと思っている人は多いと思います」

森川さん:
「どうやったら経営者の人たちは一歩二歩と踏み出せていけるのでしょうか?」

坂野さん:
「経営側の人がやろうと思っているなら、仕組みを整備してあげると入りやすいと思います。例えばオフィスの中で、お弁当箱を持ってきて食べる人がいるのであれば、デリバリー業者がオフィスまで料理を持ってきて、お弁当箱に入れてくれるようにすればいいと思います」

吉原さん:
「最初はお弁当を買ってはいけない、間違えて飲み物を買ってしまったら申し訳ないなど義務感や、
他のスタッフ同士での意識の差もあったと思います。どのあたりから、スタッフの皆さんがゲーム感覚のように楽しめるようになったのでしょうか?」

山本さん:
「初めから皆んなができている訳ではありませんでした。強く言っていた訳ではありませんが、
自分で出したゴミは持って帰ってもらうまで言っていました。笑無理なく楽しんで広めていったのが、ここ数年ずっと続いている一番大きい秘訣かなと思っています」

垣根を越えて、潮流をつくる

セッションの様子
写真:盛り上がった議論は延長するほど 中央[吉原さん]

休憩を挟んでZOOMのブレイクアウトルーム機能を使い、参加者の方に登壇者のトークで気づいたことや、明日からご自身の中でゼロ・ウェイストに対してできることなどをシェアしていただきました。

地域のコミュニティで勉強会をやっていたり、カフェでコンポストを設置して、生ゴミを全て堆肥にしているなど、すでに実践されている方が多くいらっしゃいました。

「今後活動を始める人を増やしていくには、すでに活動をしている方自身が少しずつ周りに知っていただくようにアピールすることが大事」と坂野さん。

イベントの最後は、次のフェーズに向けて何をすべきか議論しました。

すでに一人一人が動き始めているので、今度は「個人、企業の垣根を超えてみんなで潮流を作り上げていく」(市原さん)、
「市民の方から出てきたアイディア同士を掛け算して、コーディネーターが一緒に伴走していくこと」(坂野さん)など、”共創”の重要性があげられていました。

「楽しみながらやってみる」
「問題を可視化する」
「周りを巻き込む」

イベントを通して、この三つがゼロ・ウェイストの取り組みの成果に、特に関わっていると感じました。

パタゴニアさんやゼロ・ウェイストジャパンさんの活動のきっかけも、最初は、個人、一つのストア、一つの地域という小単位からスタートしています。
取り組むべきことを可視化して仕組みを作りあげていったことで、会社全体、全国へと広がりつつあります。

今回のテーマは誰にとっても関係のある問題で、でも、他人事にしてしまっていた方も少なくないのではないかと思います。これをすれば、解決といった万能のものはなく、一人一人の小さな積み重ねが、課題解決への第一歩。

今までなんとなく買っていたものを、これは本当に必要なのか疑ってみること。資源的に無駄をなくそうとすることは、結果として、自分の価値基準を明確にすることに繋がるのではないかと思います。

限られた選択肢の中で、全部を得ることはできないと諦める。その代わり、今在るものを大切に扱う。
ゼロ・ウェイストの活動をすることで良い効果が出るのは、地球だけでなく、私たちもではないでしょうか。

社会の”エラー”を少しでも減らせるように、私もまずはゴミ箱を覗くところからやってみようと思いました。

書き手: mass×mass 関内フューチャーセンター インターン 杉本丞

※配信動画の1時間25分から、1時間46分までは録画がありませんので、飛ばしてご覧ください
※配信コンテンツの1:25-1:46の間は、zoomの参加いただいた皆様とブレイクアウトルームでのセッションを行っており、その様子は機材の関係上録画されておりません。ご覧いただく際は、その時間を飛ばしてご覧くださいませ。

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